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「ワイマール憲法」とヒトラー、「日本国憲法」と小泉-(30)

<29>選挙と民衆

ヒトラー内閣成立~全権委任法の件については、

以前の内容と重複するのでここでは触れないこととする。

今回は、あれほど危険な思想を振りまき続けてきたヒトラーを、

なぜ民衆は支持してしまったのかについて。

まず、1933年当時の状況である。

議会では、長らく少数与党による混乱状況が続いていたため、

第1党たるナチスによる議会運営によって議会が安定化することに期待したのであろう。

裏を返せば、民衆は比例代表制選挙に対して否定的なのであろう。

いかに票の平等が確立されるとしても、

やはり民衆は顔の見えない候補に票を入れるのには抵抗があるのであろう。

これは、日本でも見られる傾向であろう。

特に、タイゾーの当選以来「比例代表で選ばれた議員は格下だ」

みたいな論調が選挙後に強まった。

日本の特殊な選挙制度では特に比例代表が敗者復活戦みたいな

制度になってしまっているので、この傾向は強いのであろう。

では、なぜワイマール共和国はかたくなに選挙制度を変えようとしなかったのか?

それは、まず革命を起こしたのが社会民主党ら社会主義者であったからであろう。

彼らは、本質としてはともかく民衆に対しては平等であることを訴え続けていた。

比例代表制はそれを具現する上で絶好だったのであろう。

また、社会主義者は新たなカリスマの出現を危惧していたのかもしれない。

例えば、「鉄血宰相」と呼ばれたビスマルクがこの時代に現れていたならば、

社会主義者には出る幕が無かったかもしれない。

しかし、社会主義者の掲げる民主主義は、

皮肉にも比例代表制のせいであまりにも迂遠な政治体系となってしまい、

それが民衆を失望させ、

残された可能性の中から最もアピールの強いナチスを

民衆に選ばせる結果になってしまったのではなかろうか。

これは、日本も同じことではなかろうか。

汚職にまみれた旧来の政治家に嫌気のさした国民が選んだのは、

何度も総裁選に挑戦し、効果的(と思われる)フレーズを連発する

汚職にまみれていない(単にばれていないだけなのかもしれないが)

小泉に期待をかけたのかもしれない。

彼によって、少なくとも旧来の政党政治(正確には政党内政党政治というべきか)は

ほぼ完全に崩壊した。

しかし、ヒトラーも小泉も声高に民族主義、国家主義を唱える。

その行き着く先は、いったい何処なのだろうか・・・。

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