「自民党憲法草案」を考える-(4)
- <4>国民の権利と義務-②
前回に続いて第3章について考えていく。まずは20条から。
第3項ではどうやら靖国問題を考慮してか、
現憲法では「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」
と規定しているのに対し、
「草案」では「社会的儀礼又は習俗的行為」を超えない範囲であれば、
これらの活動を認めるとしている。
しかし、知っての通り日本と言う国は世界的にも稀有な無宗教国家である。
いったい誰が「社会的儀礼」や「習俗的儀礼」を規定するのだろうか?
それに関する裁判が起こるたびに、
裁判官が逐次判断するだけで事足れりとするのだろうか?
それとも、宗教の専門家がどこからともなく現れて線引きしてくれるのだろうか?
極端な話、この条文を盾に「首相が靖国に参拝することはこの範囲から逸脱する」
と決められた場合、小泉首相はどうするのだろうか?
しかし日本の、特に神道という宗教(そう呼ぶべきかどうかも疑問なのだが)は、
これといった教典も無いし、参拝様式もわりといい加減だったする。
同様に、先ほどのような線引きが果たして可能なのかといわれれば、
私としてははなはだ疑問であると思われるのだが・・・。
また、新設の第21条の2であるが、これは国家の説明責任に言及している。
しかし、小泉首相は自分で出来もしないことを
よくもこういけしゃあしゃあと書けるものである。
やはり、一国の首相ともあろう者はこのぐらい厚顔無恥でなければ
務まらないと言うことなのだろうか・・・。
「草案」では、生存権の強化がなされている。
まずは、新設の第25条の2。これは国の環境保全の責務を規定している。
これは、出来れば今すぐにでも盛り込んで欲しい条文である。
日本にはこれといった資源が無い。
しかい、そうであるがゆえにいまや「もったいない」と言う日本語が
世界に向けて発信され、また省エネに関する技術も世界随一であろう。
現在、世界的な原油高であり、しかもそう遠からん将来それも枯渇すると言われている。
そういう時代において、省エネは環境保護や資源保持において
重要なキーワードになっていくことは必至である。
その意味で、この条文は充分世界に通用するものであると私は思う。
続いて、これまた新設の第25条の3。
これは、近年の犯罪被害者保護の観点を最高法規によって規定しようとするもので、
「犯罪被害者は、その尊厳にふさわしい処遇を受ける権利」があるとしている。
これは、刑法第39条(心神喪失及び心神耗弱)にも関係してくるのだろうが、
近年、未成年者の犯罪が多発し、
それによって一般には名を明かされない犯罪者が増えている。
また、犯罪者は裁判が起こされるたびに「精神鑑定」を行われたりと、
やたらと犯罪者を保護しようとする動きが目立っているように思われる。
一方で被害者はと言うと、マスコミの度重なる取材にさらされ、
人権を蹂躙されているように思われるケースも少なくない。
そういったことを防ぐために、最高法規によってこれを保護する動きがあるというのは
いい傾向であるように思える。
こういった視点を野党も持ち得ないと、
巨大与党となった自民党と対等に戦えないのではないだろうか。
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