国を守るのが、愛国心で大和魂の発露なら… 天災と国防(昭和9年11月『経済往来』より)-④
台風の襲来を未然に予知し、
進路や勢力の消長を今より確実に予測するためには…
・太平洋上、日本海上にさらに若干の観測地点を設置
・大陸方面やオホーツク海方面にも観測網を拡大
→現状(昭和9年)では、細長い日本島弧の上に、
ただ一連の念珠のように観測所の列が分布しているだけ
(例)伝え聞いたアメリカの計画
太平洋上に浮き飛行場を設けて横断飛行の足がかりに
→これが可能ならば、洋上に浮き観測所の設置も可能なのでは?
※現代においては、AMEDASによって、
気象観測の範囲は南鳥島や与那国島、南大東島にまで及んでいる。
しかし、日本領だと主張している尖閣や竹島にはそれは無く、
竹島に至っては韓国の気象観測台が置かれ、
竹島の天気は韓国側が取ったデータをそのまま流用しているという話もある。
その辺りも含めて、領土問題には戦略的な対処が必要なように思われるのだが…。
人類の進歩に伴って、愛国心や大和魂も進化すべき
→砲煙弾雨の中に身命を賭して敵陣に突撃するのも貴い大和魂かも知れない
→下手な敵国よりも強敵である天然の暴威に対して、
普段から国民一致協力して適当な科学的対策を講ずるのも、
また現代にふさわしい大和魂の進化の一側面として期待すべき
→天災の起った時にはじめて大急ぎで愛国心を発揮するのも結構だが、
20世紀の科学的文明国民の愛国心の発露は、
もう少し合理的な様式があってしかるべき!
※締めで、やはりやんわりと「対外戦争なんかやってる場合なんですか?」と主張。
戦争が国家間の努力によって回避できるのと同様、
天災だって民衆の普段の努力によって被害を最低限に抑えることは可能である、
というのが寺田の主張であると思われる。
今日行われている助けあいも大いに結構なことだが、
それは結局のところみんなで痛みを分かち合うということ。
あらかじめ被害を最低限に抑えることができれば、
そもそも痛みを分かち合う必要すらなくなる可能性だってあるわけだし、
その方が合理的なんじゃないの、と寺田は考えてるのだと思われる。
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