この国に生きる、ということ② 西山編-(1)
金比羅山火口への登り口にある駐車場(ここは無料)に車を止め、
そこから西山火口に向かう道に入る。
まず目に飛び込んでくるのは、噴火による隆起で寸断された国道230号と、
その窪地に雨水などが溜まってできた沼。
沼の向こう側の道路沿いに放棄された住居があったり、
沼の向こう側からきた車用の標識や街路灯がそのままにされていたりする。
あいにくの天気で人通りもまばら。
土産物屋も開店休業状態でひっそりとしている。
その脇を抜けて、西山火口への道に入る。
西山火口への道から沼方向を見る。
奥の建物は、旧西胆振消防本部庁舎。現在は有珠山噴火展示資料室。
電柱や電線は捨て置かれ、無傷の道路標識が池の中に虚しく残っている。
1つ前の画像の中ほどにある白いものを拡大撮影。
噴石が直撃したのか、屋根の部分が潰された自動車が打ち捨てられている。
旧道脇に用意された遊歩道を登りだす。
もともとこの道は下りの道だったのだが…
西山一帯が噴火時に大きく隆起したために上り坂になってしまっているのだ。
先ほどの沼ができた原因は、この隆起による。
下り方向に塗り固められていたアスファルトが、
地殻変動によって持ち上げられ、階段状に寸断されている。
この画像ではたいしたことないように見えるが…
この通り、遊歩道沿いにけっこうな距離で続いているのだ。
その亀裂から生えている植物が、時の流れを感じさせる。
そういう中でも生きながらえたものは、このようにして可憐に、たくましく花を咲かせる。
寺田の言う「自然は過去の習慣に忠実」(『津浪と人間』より)というのは、
何も悪い意味ばかりとも言えないと、この桜に教わりました。
道はいよいよ火口に接近。周りの景色からも、黄土色の山肌へと変色。
噴火から10年以上を経ても、このような噴気が何ヶ所からも出ている。
そして、この噴気が発する硫黄臭こそが、
この山肌から緑の気を奪っている張本人と思われる。
台地に呑み込まれた生活の痕跡。
詳細は後述するが、2000年の噴火では、
金毘羅山のさらに西に当たる西山から最初に噴火している。
有珠山のような溶岩ドームを作る火山の溶岩は粘着質であるらしく、
それらは地下に長く居座り、巨大化する性質があるようなので、
もしかすると有珠山直下のマグマ溜まりは、今も広がり続けているのかもしれない。
(参考ページあり_http://www.asahi-net.or.jp/~ue3t-cb/bbs/special/sience_of_hotspring/sience_of_hotspring_3-1.htm)
地盤の隆起により置き去りにされた重機と、露出した水道管。
噴煙を何千mも吹き上げるポテンシャルを持つ火山の圧倒的パワーの前には、
これらも子供のおもちゃのようにやすやすを持ち上げ、破壊できるということだろう。
現在はカルデラ湖化した西山火口。
自らが噴き出した溶岩が冷えて固まってその口を塞ぎ、
今は平静を保っているが、洞爺湖も含めて有珠山周辺にはこう言った旧火口の沼が
多数存在しているのだ。
後編では、西山山頂から虻田側に降りて行く道すがらの様子を伝える。
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