この国に生きる、ということ⑧ 『天災と国防』と日本が次に進むために
今年の梅雨は少々難解である。
沖縄ではや九州が早々に梅雨明けしたというのに、
関東などでは猛暑日すら記録する日が続いているのに、
いまだ梅雨明けが宣言されていない。
やはり、昨年末から始まる大雪などから今年の日本は
寺田が『天災と国防』で言う悪い年回りと言えるのではないだろうか。
チリでの火山噴火やニュージーランドでの地震など、
昨年後半から環太平洋造山帯が活動的であり、
この傾向がいつまで続くか予断を許さない。
そうなると、すわ東海・東南海・南海でも、と言うことになってくるが、
まぁ今起こったら日本は壊滅的ダメージを受けるでしょうな。
にも関わらず政治の方はと言えば、いっこうに危機モードのスイッチが入っておらず、
「菅直人が降りたら…」だの
「◯◯なら与野党をうまくまとめてくれる」だの、
「いや、大連立は翼賛体制の再来だ」だのと言ってもめるばかりで、
いっこうに先に進む気配がない。
かと言って、「オレに任せろ」「オレならやれる」と言ってくれる
頼もしいヤツがいるわけでもなく
(日本人はそう言うヤツがキライみたいだけど)、
そうなると少なくとも一般民衆なら「誰がやっても大差無い」ということになる。
だからこそ寺田は「良い年回りのうちに備えを怠らないことが大事」と言うのだが、
前回の悪い年回りだったと思われる1995年
(阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件のほか、信越地方で死者を出した7・11水害など)
の後、政府は何をやっていたか。
例えば単純に首相で言えば当時在任中の村山富市から菅直人まで10人が在任している。
小泉純一郎が約5年やっている以外は長くてせいぜい2年ほどで、
安倍晋三以降は既に死に体の菅直人を含めた5人が1年ごとに交代している。
各国務大臣に至っては、もっと短い期間で交代していると考えられるので、
連続性と一貫性においては当然疑問符がついてしまう。
かと言って、その連続性と一貫性を補完する官僚たちは何をやっていたかと言うと、
旧態依然の計画を後生大事に予算化しようと奔走してるわけで、
悪い意味で連続性と一貫性を発揮していると言えなくもない。
現場の頑張りで神戸などは奇跡的に早い復興を遂げたが、
今回の震災とは被災規模が格段に違うし、
当時以上に財政状況が不健全になっているのが足かせにもなっている。
一方で村上春樹が効率重視路線を非難していたが
(お前がするなよ、とワシは思うのだが…)、
日本は世界と戦うために高度に合理化してコスト削減に励んできた。
そのために、例えば自動車産業は下請けが最終的にいくつかの企業に収斂されていく、
タルのような産業構造になってしまっていた。
そのタルの底が震災で一気に抜けてしまったために、
実は世界中の自動車産業にダメージを与えてしまう結果になってしまった。
一貫生産ではなく、外注を繰り返してコスト削減に励んだ結果、
親会社からタルの底が見えにくくなってしまっていたのだろう。
その辺りのことも寺田氏は苦言を呈していたわけで、
つながることで大きな力を産んだり相互扶助の構造を生むというメリットと、
共倒れするというデメリットのバランスを本来はよく考えておかなければならなかった、
ということなのだろう。
本編でも、自衛隊の役割は日本のこういう現状に対して理にかなっていると書いたが、
そもそも自衛隊自体東アジアの地政学的要請から生まれたと言えるわけだから、
災害救助が必ずしも本分とは言えない。
特に現状では、中国が東シナ海や南シナ海に勢力を張り出して、
太平洋進出を目論んでいると言われており、アメリカも憂慮している。
その状況においても周囲に気を遣って、
防衛力を領土・領海内に張り出していない自衛隊は、
災害救助が本分と思われても仕方ないと思われる。
中韓が今回の震災で真っ先に支援を申し出たのも、
硬軟織り交ぜた外交戦略の一環だと勘繰ることだってできる。
したたかとも、あざといとも言うことはできるが、
そういうところに付け入られないようにするのもある意味国防と言えるし、
どこの国も常にそう言うことを考えているぐらいに思っているべきだと、
ワシは思うわけで…。
「戦争は人間の叡智で防ごうと思えば防げるが、
天災の発生は人間の叡智でも防ぎ切れるものではない」
と言うようなことを寺田氏も言っているわけで、
もっと国防のために真面目に知恵を絞った方が良いんじゃないでしょうかねぇ。
最後にワシとしては、
そろそろ東北の方々には自力で立ち上がることを考えてもらいたいな、と思うわけです。
どうやらあまり動きたくないみたいですし
(故郷に近寄ることさえできない地区もありますが)、
郷を愛する心がそんなにお強いのでしたら、
永田町内で不毛な政治闘争をやっている議員のセンセイ方のことなんか無視して、
自力でなんでもやったらいいと思うんですよ。
確かに金の問題がついて回るとは思いますが、
臨時の仕事だからってガレキの撤去の仕事を嫌がっていても、
そのガレキが突然消えるなんて言うことはないわけですから
(まさかボランティア頼みってことはないと思いますが…)、
新しい器を建てて前に進むためにはまずやらなければならないことだと思います。
第3期については、やること自体は決まってますが、時期に関しては未定です。
いろいろ出かけてるので、写真の紹介なんかもしたいと思ってますし、
映画を観てるペースが今年は非常に早いので、レビューに忙殺されてるとも言えます。
まぁ、これに関しては長く取り組んで行きたいと思ってますので、
やめる気だけはないんですが…。
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