映画 『チェルノブイリ・ハート』(☆☆☆)
今作は、2003年のアカデミー賞で短編ドキュメンタリー部門賞を
獲得した作品である。
映画としては古いが、
チェルノブイリ原発事故から15年強を経た状況の一面を
確実に捉えているという意味では、
日本がこれから取るべき道の指針となりうる事例も少なくないだろう。
「原子炉の形式が違う」とか、
「福島第一原発は水素爆発までしかしてない」とかいう話もあるが、
放射性物質を撒き散らしたという事実は曲げようがない
(量の多寡については議論の余地があるだろうが)。
今作で示された事例はごく一部で、
しかも極端に悪い部分をフレームアップしているに過ぎない
かも知れない。
しかし、どういった性質の、どのぐらいの放射線量で
こういった事例が発生するのか、
明確な基準を2011年の今に至るまで人類は持ち得ていないのである。
もちろん、だから起きないと強弁することもできるのだが、
それは無辜の民衆を使って人体実験をするようなものである。
また、洋の東西を問わず生まれ育った土地から離れたがらない人々が
少なからず存在することも再確認できた。
地縁が強いと思われる日本においては、
そういった人々とどのように向き合っていくかも
大きな課題の一つと言えるだろう。
福島第一原発周辺の土地を国で買い上げることになるだろうが、
カネさえ払えば全て解決、というわけにはなかなかいかないだろう。
今作の冒頭と終わりに、日本人向けのメッセージなどが入る。
「人間は国境を作ったが、地球には国境はない」
という言葉は、やや使い古された感はあるものの、
こういう時に改めて思い知らされる。
同じ時代を生きる我々は、
ネットワークなどお構いなしに同じ空の下で、
同じ空気を吸って生きているという意味では、
否応なしに繋がっているのだ。
しかし、そういう横の繋がりばかりではない。
文明を持ち、地球を住処とし、歴史を紡ぎ続ける限り、
過去と現在と未来は縦につながり続けるのだ。
過去は、現在の我々にさまざまな財産とさまざまな負債を遺してきた。
現在を生きる我々は、未来に向かって何を残せるのだろうか…。
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