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映画 『死刑弁護人』(☆☆☆)

「おびただしい色は人の目をまどわせ、
おびただしい音は人の耳をだめにし、
おびただしい味は人の口をそこなう」(『老子』)
世の中には様々なメディアを通じて、
玉石混淆様々な情報が垂れ流されている。
それらの真偽を確認するのに、
個々人は能力も時間も圧倒的に不足している。
だからこそ人は、「信頼できるメディア」
というものにすがって行くわけだが、
日本では既にそれもままならない。
新聞の欺瞞はあの戦争によって明らかであるし、
日本のテレビメディアはその多くが
新聞社より発しているわけだから推して知るべきであろう。
政府広報ですら、「大本営発表」の域を
今だに出たとは言えない面もある。
国家権力に対する不信も、
ワシがよく挙げる『ポチの告白』の例をあげるまでもなく、
日頃問題視されているはずなのである。
にも関わらず我々は、結果としてメディアの垂れ流す情報に
踊らされ続けている。
本来我々も、真実を追求すべく
積極的に情報を獲得して行く必要があるのだが、
日々の生活に忙殺されているのが現状であろう。

閑話休題。
今作は、法廷において真摯に真実を追求する
安田好弘という弁護士にスポットを当てたドキュメンタリーである。
この名前は知らなくとも、
林眞須美や光市母子殺害事件のことは、
それこそマスコミで何度も報道されているので
知っている人も少なくないだろう。
これらの弁護人を引き受けた、
いわゆる「人権派弁護士」の一人(首魁と言うべきか)が
この安田好弘である。
彼の元には、弁護人のなり手が極端に少ない
死刑裁判の弁護案件が多く寄せられる。
それは、彼が死刑廃止論者だからではなく、
あくまでも真実の追求者としての手腕(辣腕)を
買われてのことであろう。
しかし、彼の思いとは裏腹に、 被害者から「悪魔の弁護士」と呼ばれ、
警察や検察の紡ぎ出す「ストーリー」を前に敗北し、
あまつさえ彼らの罠にかかって逮捕までされてしまう。

彼は、学生運動に参加し、かつ転向もしていない。
それは、彼のそういうスタイルを見れば十分伝わってくる。
しかし、ただ意地で抵抗しているわけではない。
人は必ず更正できるという信念があるのだ。

今作を観て改めて思ったのは、
やはりワシがテレビっ子であるがゆえかも知れないが、
マスコミに毒されていることを改めて思い知らされたことである。
テレビで安田弁護士のお顔は何度か拝見しているが、
多分その都度あまりいい印象を抱いていなかったように思われる。
そして、やはり日本人は情緒的な民族であること。
裁判とはある意味儀式化してしまっていること
(有罪率99%という事実が物語っている)。
本来は、安田弁護士の言うように、
時間をかけて真実を追求する場であり、
それを通して犯罪の病巣を洗い出す場であるべきなのであろう。
しかし実際には、溢れかえる刑務所と裁判案件、
さらには被害者感情を考慮して、早期決着と厳罰化、
さらには裁判員制度の導入が推し進められている。
人が人を裁く以上、本来は多くの弁護士が
安田弁護士のようにあるべきなのであろうが、
彼ら弁護士も人間である以上、そうはいかないだろうねぇ…。

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