映画 『汚れた心』(☆☆☆)
日本人移民と太平洋戦争っていうことで言えば、
アメリカでの移民部隊の話が有名であるが、
当時の移民の数だけで言えば、
今作で描かれるブラジルも負けてはいない。
そんな終戦当時のブラジル移民たちには、
地球の裏側で起こった日本敗戦の報は正しく伝わらず、
あまつさえそれを「虚報」と喧伝し、
それを流す者を「非国民」や「国賊」として、
粛清することさえあったようである。
しかし、決して広くない日本人移民コミュニティ。
「非国民」や「国賊」扱いする前は、
友であり仲間であったわけである。
次第に人心は荒廃し、物語としての破局を迎えて行くわけだが…。
今作を観てまず思ったのは、中国人移民コミュニティの強靭さである。
アメリカにチャイナタウンがあり、
日本にも中華街があるが、
なんと言ってもシンガポールがその顕著な例であろう。
全人口の7割以上が中国からの移民によって占められ、
北京語が公用語として認められているほどである。
また、近年アフリカへの進出が著しいわけだが、
彼ら中国人移民は現地に大挙して押しかけ、
その様相は中国村が現出したが如くと言われる。
そのせいで、せっかく中国企業が進出してきても、
現地人のところには雇用も金も落ちてこないらしい。
このように、良くも悪くも中国人移民コミュニティは、
強固であると言える。
翻って、日本人移民コミュニティである。
平時ならば、今作のように国家主義と順応主義が混在していても、
特に問題はないことだろう。
しかし、隠蔽体質やレッテル貼りのような、
日本人の宿痾のようなものを、
実際にあった事象を元に今作ではえぐり出している。
かと言って、中国人のような強さ(強引さ)も無いから、
結局自我を押し殺して折り合って行く方向に行っちゃうんだよね
(中国的な手法が決して正しくないことは、
現代世界が証明しているわけだが…)。
日本人は、なまじ変われるから、世界を変えられない。
いや、変える必要がない(と思っている)のだ。
しかし、中国人もアメリカ人も、
本質的なところでは変われないのだ。
だから、世界を自らの形に合うように変えて行こうとするのだ。
そういう、芯の強さっていう意味では、
日本は「勝てない国」と言えるのかも知れない。
だからこそ日本人は、常に忍従を強いられる。
ただ、その辺の方向性、
つまり凝り固まる(不動心)かブレる(変化に即応する)
かの二択ですら、ブレまくってる国だからねぇ…。
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