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映画 『ソハの地下水道』(☆☆☆☆)

ポーランドで実際にあった、
ユダヤ人を地下水道に逃がし匿い続けた話の映画化。
助ける側も助けられる側も、
表向き決していいやつではないんだが、
そりゃみんな生活があるし、
何と言っても欲望からは逃れられないから、
仕方ないんだよね。
その辺の生々しさが、この作品のリアリティを支えてるとも言えるね。
助けたソハ(ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ)は、
下水工として長年生計を立ててきたが、
戦時中で思うように稼ぐことができない。
そこで彼は、ユダヤ人を地下水道に匿って、
金のある彼らからしこたませしめてやろうと考えた。
しかし彼らの数は多すぎて、
地下水道には匿いきれないし、
何と言っても住むにはあまりにも劣悪な環境である。
脱落者や逃亡者が後を絶たない。
しかも、逃亡者間で肉欲や愛欲が発生するし、
大雨になればたちまち水浸しである。
ユダヤ狩りの脅威もある中で彼は、
いつしかユダヤ人に情を移し始めるのだが…。

実際ここまでドラマチックだったかどうかはわからないが、
ソハを追い込んで行く脚本の作りはなかなか秀逸である。
ワシはもちろん当時の人間でもないし、
ヨーロッパ人でもないから、
なんでこんなにユダヤ人が嫌われるのかわからんけど、
それでも自分がユダヤ人を助けるためにドイツ兵を一人殺したせいで、
友人を含めた同邦人を殺されたら、
そりゃやるせない気持ちにもなりますわ。
オスカー・シンドラーや、
杉原千畝のような力を、ソハは持っていなかった。
もっと言えば、彼らのように崇高な心情から彼らを助けたわけでもない。
でも、それでいいじゃない。
口じゃ何とでも言えるんだから。
助けたっていう事実が、間違いなく彼を英雄たらしめてるんだからさぁ。

ラスト、ソハが娘をソ連軍のトラックに轢かれそうになるのを
助けたために死んだというエピソードがテキストで流れる。
人々はそれを見て「ユダヤ人を助けたから神罰が下った」と言い、
その後「人は神の名を借りてまで人を罰したがる」と流れる。
神って何なんだろうか、という思いを改めて強くした次第である。

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