映画 『ゼロ・ダーク・サーティ』(☆☆☆☆)
『アルゴ』にしてもそうだけど、よく考えたら
これほど大っぴらに活動を公開してる諜報機関って他にないよね。
これだけやるよ、ってことを世界に宣伝して、
抵抗勢力を抑え込むって意味があるのかねぇ。
それはそれとして、
結局のところ復讐の連鎖を正当化してるだけだよね、この映画。
ただ、それをちゃんとサスペンス映画に仕立ててるっていうのが、
いかにもアメリカらしいんだけど。
今作の中でもアメリカ人とアラブ人(クウェートの話だけど)で
アメリカ人:「おれたち友だちだよな」
アラブ人:「いや、そうは言えない。
お前はオレが頼みごとする時は電話にも出ない」
アメリカ人:「じゃあ、友情のしるしとして、
ランボルギーニなんかどうだい」
とか言って、このアラブ人にテロリストの母親の電話番号を
教えるように持ちかけるんだよね。
東日本大震災の時もアメリカ軍が「トモダチ作戦」とか言って
協力を持ちかけたけど、
福島第一原発から放射能だだ漏れって聞いたら
途端に腰引けちゃうんだから、
彼らのいう「トモダチ」なんて方便に近いよなぁ。
脱線ついでに、キリシタンとイスラムの戦いは、
それこそ1000年もやってるんだから、
ある意味1000年間も復讐の連鎖を続けているとも言える。
そこに、ユダヤとか石油とかスエズ運河みたいな
利権も絡んでくるから余計にややこしい。
CIAは、そこへさらに手練手管を弄して、
あっちを持ち上げたと思ったら今度は敵視したりと、
アラブ諸国間を分断し続けてきたわけである。
それをビンラディンは、やや俯瞰的に見て、
「こういう状況はイスラム全体のために良くない」
と思って自らが新しい核となろうとしてたんじゃないかなぁ。
自爆テロの先鞭つけたのはおそらく日本だとワシは思ってるんだが、
日本にしろイスラムにしろ、そうさせるまで追い込んだのは
結局アメリカなんだよね。
「世界の警察」ズラしてる彼らだけど、
警察とヤクザ(アメリカ的に言えばマフィアやギャングになるか)
なんて似たようなもんなんだよね。
閑話休題。
今作は『ハート・ロッカー』みたいに
ドキュメンタリーっぽい構成じゃないので、
サスペンス映画として普通に楽しめるし、
失敗もそれなりに認めてるし、
何と言ってもクライマックスに向けての緊張感の高め方が秀逸である。
ただ、『アルゴ』みたいな軽妙さが無く、
やっぱり『ハート・ロッカー』みたいな
重苦しい作品に仕上がってしまった
(まぁ、その辺は好みの問題だけど)。
また、ビンラディンを追い詰める決め手がかなり貧弱
(その辺りはアルカイダが巧妙に秘匿していたせいもあるんだけど)で、
CIAの情報分析官マヤ(ジェシカ・チャスティン)のゴリ押しで
作戦が決行されるという、
石原莞爾も真っ青の下克上で作戦決行。
まぁその過程もある程度明かしてるから文句言えないんだけど。
話題性は高いが、題材としてかぶる部分のある『アルゴ』と比べると、
やはりエンターテイメント性でやや劣ってしまう。
実行作戦のリアリティはさすがの見応えなので、
ミリタリーものとしては一見の価値はある。
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