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映画 『故郷よ』(☆☆☆)

福島の未来を暗示するような、
というか先達とも言えるチェルノブイリ
(正確に言えば隣町プリピャチ)を舞台にした今作。
ドキュメンタリーなどでは、避難勧告を無視したり、
事故後しばらくして戻って来て
再び住み直した人々が取り上げられていた。
しかし今作では、主に架空のふた家族を主人公として取り上げ、
事故当日とその10年後の変化を描き出している。

当時社会主義国ソヴィエトに所属していたプリピャチは、
当初一般市民には事故の詳細について全く知らされていなかった。
作中では、原発技師のアレクセイ(アンジェイ・ヒラ)が
息子のヴァレリー(イリヤ・イオシフォフ)と共に植えた
リンゴの若木が枯れたり、
川の魚が腹を上にして浮かんでたりする様子を
暗示的に提示しているが、
一般市民はその変化に気付いていない。
アーニャ(オルガ・キュリレンコ)はその日結婚式を挙げるが、
新郎は「森林火災の消火」に駆り出されて中座。
彼が去ってしばらくして、式場や街には「黒い雨」が降り出す。
技師のアレクセイは異変に気付くも、緘口令を敷かれ、
妻子をとにかく逃がし、街の人を一人でも救おうと彷徨う。
10年が経ち、新郎を喪ったアーニャは、
ツアーガイドとして、あるいはトラウマを抱えた母を慮って
地元に留まっていた。
この地から飛び出したいという思うを抱きながら…。
アレクセイは家族の元にも帰れず、当てのない放浪の旅を続けていた。
ヴァレリーは、疎開先でいじめられながらも何とか暮らしていた。
父はまだ、どこかで生きていると信じて…。

ドキュメンタリーなどでも語られているように、
プリピャチは今でも立入制限区域である。
そして、除染が限定的にしか機能していない福島第一原発周辺も、
これに近い状況を迎えるように思われる。
日本でも、ソヴィエトと同じような情報統制を行い、
結果的にそのせいで被害が拡散したとも言えるわけで、
日本もあの事故から(いや、過去のあらゆる事象からというべきか)
何も学べていないのである。
政治家や官僚が、つまらん意地の張り合いをしている限り、
今作のような不幸がこの国から絶えることは無いだろう。

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