映画 『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(☆☆☆☆)
フランス革命から遡ること40年弱。
北欧デンマークで、啓蒙思想を取り入れた国王
(ミケル・ボー・フォルスガード)による
「上からの改革」がまさに日の目を見ようとしていた。
しかし、その改革を成し遂げようとした国王は、
実はただのワガママなボンボンで、
政略結婚でやって来た聡明なイギリス人の王妃
(アリシア・ヴィカンダー)は、そんな国王を持て余していた。
そこに現れたのが、改革の黒幕とも言える国王の侍医
(マッツ・ミケルセン)。
急進的な啓蒙思想家だった彼だが、
そんな彼に聡明な王妃は惹かれて行き、
それがやがて改革そのものを瓦解させる
一大スキャンダルに発展するわけだが…。
まず、この国王というのがどうしようもない。
要は、ただのワガママなんだから。
王妃との初夜に手コキさせたと思ったら、
急に押し倒し、拒絶されたら「王の命令に逆らうな」である。
まぁ、愛のない結婚なんてしょせんこんなもんなのかも知れないが、
これでは王妃が他の男になびくのも仕方ない。
しかも、国王自身そうし向けてるように見えなくもないし、
この辺から崩壊の芽は吹き出していたのかもしれない。
王妃もまた王妃で、結局はすべて運命として受け入れた上で、
それでも情愛に走ってしまう。
そしてこの侍医である。
理想としては自由を語りながら、
王妃が自分の子供を妊娠したと聞けば「産むな」と言い、
スキャンダルが広まり出すと
自ら廃止したはずの検閲制度を復活させてしまう。
要するに、みんなワガママ(良く言えば自分に正直)なんだが、
既得権者っていうのがまたそういうのにつけ込むのに長けてるのが、
古今東西を問わないていうところがねぇ…。
ラスト、侍医が心を砕いてきたはずの民衆の突き上げによって
処刑されるシーンは、まさに皮肉以外のなにものでもない。
結局民衆は、既得権者の口車に乗せられて、
自分たちのために行われてきたはずの改革のすべてを投げ出し、
自分たちの境遇を再び不幸なものに貶めてしまったのだ。
そういう意味では、現代政治に対して非常に風刺が利いており、
実話をベースにしていることと相まって、
この作品の価値を高めているように思われる。
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