映画 『コンプライアンス-服従の心理-』(☆☆☆)
今作を観終わってまず思い出したのが、
『ハンナ・アーレント』
(札幌ではまだ公開前なので予告編だけだけど)に出てくる
「悪の凡庸さ」という言葉である。
今作は、アメリカで実際にあった、
日本で言えば劇場型詐欺のような手法で行われた
イタズラ電話事件なのだが、
警察を語る犯人が、ハンバーガー店に電話をかける。
それに出た店長に犯人は、
「おたくの若い女性店員が金を盗んだと、
客が通報してきた。ついては操作に協力して欲しい」
と、店長に話す。
相手を警察だと信じた店長は、
犯人の指示に従い店員を店長室に閉じ込め、
犯人の指示に従い彼女の身体検査を行う。
当然なにも出てくるはずがないのだが、
犯人の指示はどんどんエスカレートして行く。
店側の誰かが、警官を語る犯人の嘘を見抜くまで…。
『ハンナ・アーレント』の構図を借りると、
以下のように置き換えることができるだろう。
ニセ警官=ヒトラー
店長=アイヒマン
店員=ユダヤ人
店長は、警官の正体を見抜けない以上、
彼を警官だと信じる。
これにより権力の後ろ盾を得るわけである。
そうなると店長は、権力に寄りかかり、
権力の下僕となって一種のモラルハザードに陥る。
権力者の命令に従っているのだから仕方ない。
そういう心理状態である。
冷静になって見れば実に滑稽なのではあるが、
犯人に余罪が70件あったという事実を考え合わせると、
「悪の凡庸さ」が改めて実証されているわけである。
まぁ、『ハンナ・アーレント』を観れば済む内容と言えなくもないが、
日本でも劇場型詐欺が大流行りなわけだから、
他山の石として観てソンはない映画だと思う。
ただ、結局犯人の目的がよくわかんなかったのがなぁ…。
権力欲を満たしたかったのか、
それとも単なるエロ目的なのか…。
まぁ、普通の家庭がある人だし、
多分前者だと思うんだけどねぇ。
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