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映画 『永遠の0』(☆☆)

ワシは、いまだにもの書きになる夢を捨てられない、
あわれな「大きな子ども」です。
だから、300万部も売れた原作から、
何か一つでも盗めるものがないか、
という思いもあって今作を観ました。
確かに、あのストーリー運びはうまいと思います。
しかし、残念ながらワシには
今作に関してはどうしても真似できない部分があります。
それは、ワシは「あの戦争」を、
あれほどまでセンチメンタルには、
もうどうしても語れない、ということです。
つまり、ワシの心根は冷淡な歴史家のそれに近い、ということです。

この前も『NHKスペシャル』で、
あの戦争の情報戦に関することをやっていました。
ワシは、そのテの番組はそこそこ観てる方だと思うので、
正直今作の内容に関してそれほど驚く点はありませんでした。
むしろ、既存の特攻モノで語り尽くされた感のある、
非常にセンチメンタルで、美しすぎるほどに美化された作品であります。
であるからこそ、あえて言いたいことがあるわけです。
まず、いつまで「あの戦争」を、こんなにセンチメンタルに見ているのか。
この国は、いつまで「戦後」の感傷に浸り続ければ気が済むのか。
もっと言えば、いつまで「戦後」の気分でやっているのか。
「あの地震」に関しても、この国の人間は
相変わらずセンチメンタルなばかりで、
いっこうに進歩していないように思われる。
くだんの『NHKスペシャル』のように、
我々はもっと客観的に「あの戦争」と向き合うべきだと、
ワシは思ってしまうのである。
そうできない原因を作ってきたのは、
あの時代の記憶を心の中に押し留めて死んでいった、
老人たちに責任があると、ワシは思っている。

今年、ようやく靖国神社と遊就館に行くことができました
(安倍晋三が参拝に行ったらしいね)。
神社は神社として措くとして、
ワシは遊就館の展示にやはり今作と同じ
センチメンタリズムを感じずにはいられなかった。
靖国神社の添え物であるから、
コンセプトとしては仕方ないのだろうが、
特定アジアの国々から槍玉に上げられても仕方ないと思うし、
アレを容認しているからこそ、
あの世界観からいつまで経ってもこの国は
抜け出せないのではないかとさえ思われた。

作中「特攻も自爆テロも同じ」か否かの話になる場面がある。
ワシは、やはり同じだと思う。
むしろ、何が違うのか理論的に説明してもらいたい
(当然、作中の説明では全く納得できない)。
アレは、「聖戦(ジハード)」の悪しき前例と言って
差し支えないと思われる。
また、現在の北朝鮮のありようは、
日本の天皇制の真似事ではないかと、ワシは思っている。
つまり、大日本帝国の因習はいまだ世界のそこここに
息づいていると言えるのではないだろうか。

国をして「生きよ」と教える国と、
国をして「死ね」と教える国とでは、
これほどまでに大きな差が生まれるということである。
今年は「ゼロ戦」ブームらしいが、
それこそ堀越二郎が海軍からの無茶振りに応えた結果が、
あのゼロ戦なわけであるが
(『風立ちぬ』でその話に全く触れてないのは
ある意味非常に残念なわけだが…)、
これを良しとした海軍には人命に対する配慮が、
やはり欠如していたと言わざるを得ないわけである。
その上に、数々の特攻兵器である。
今作は、ひたすらに特攻を称揚しているようにしか、ワシには見えない。
特攻のむごたらしさは、回天をテーマにした
『出口のない海』の方が手厳しいし、
今年の大戦モノで言えば、実体験込みの『少年H』の方が、
実直だししたたかだと思う。

繰り返しになるが、
こういうセンチメンタルな作品が、今頃になってまだ売れるということは、
年寄りが口をつぐんできたツケであると思うし、
日本がいまだに戦後を引きずり続けていることの証拠だと思う。
我々は、この感傷から一刻も早く脱し、
あの戦争をいかに回避すべきだったか、
もっと客観的で戦略的な思考をもって向き合うべきだと、
改めて思った次第である。

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