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映画 『天心』(☆☆☆)

今風に言えば、
「明治初年のクールジャパン」の旗振り役が、
岡倉天心っていう当時の官僚だったわけだが、
こういう文化振興の主体が、
今も昔もお国だっていうことが、
日本が「やせた土地」である証拠のひとつだと思うんだよねぇ。
文化振興のアプローチには、
買ってやる(要するにパトロン)か
売ってやる(浮世絵の大版元である蔦屋とか)の
二つがあると思うんだけど、
今も昔もこの国じゃあどっちも不真面目なんだよね。
少なくとも今作だけを観る限りは、
岡倉天心も同様で、
環境は整えてやるが生活は作家個々人の手弁当で、
っていうスタイルはどうなんだろうね。
その裏では、華族の奥さんと密通したり、
ひとりだけ宴会に招かれてたりと、どうにも生臭い。
一方で文展では審査に手心を加えてもらうよう土下座したり
(その系譜を受け継ぐ日展で去年不正があったしねぇ)、
弟子のためにやることやってる
(やってることはかなりアレだが…)。
要するに、あまり良くない描き方をしてるわけで、
天心の功績が今作からあまり伝わってこないんだよね。
まぁ、ことさら称揚して聖人君子みたいに描かれても
ワシの場合ケチをつけるわけだが…。
今作冒頭で描かれる「廃仏毀釈」よろしく、
バランス感覚に欠けるのが
この国の良さであり悪さでもあるわけだけど…。

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