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映画 『ルートヴィヒ』(☆☆☆)

足利義政のような政治からの逃避と芸術への逃避。
徳川綱吉のような偏執ぶり。
鳩山由紀夫のような夢想的平和主義。
これらを兼ね備えたかのような、
バイエルン国王ルートヴィヒ2世の生涯を描く今作。

まぁ、実際例にあげた3人は、
ともにどうしようもない為政者だったが、
ルートヴィヒはそれらを兼ね備えているだけあって、
ある意味尋常ではないダメ君主ぶり。
国情も理解せずに、
革命主義者と言われるワーグナーを招聘したり、
国防などいらない、芸術で世界を平和にするのだ、
とばかりに軍事費を文化振興に回す。
劇場や城といったハコモノに、
国家財政も理解せずに湯水のごとくカネを投下する。
結婚も取りやめ、
かと言って男色にも走れず、
孤独を深めた挙句に自分の夢想の中にどんどん閉じこもる。
こんな人間に、国家を治められるはずもないのだが、
ザンネンなことに王制は原則世襲である。
長子たるルートヴィヒは父の死とともに、
自動的に王位に就き、退位もままならない。
世襲の良くないところはその辺にあるんだろうけどねぇ。

とはいえ、世襲の不幸は世襲する側にもあると言える。
ルートヴィヒは、若くして父を失わなければ、
あるいは長子でなければ、
もう少し幸せな人生を送れたかも知れないが、
ある意味では王権という強権なしには
成し遂げられなかったこともやっているわけで
(その辺は足利義政に近いところがある)、
その辺の評価は分かれるところであろう。
世襲ということは、ある意味では自由を奪われれいるわけで、
カネがあれば自由になれるとは必ずしも言えない、
といういい例とも言えるだろう。

ただ、ルートヴィヒはやはり人間形成の上で、
幾つもの破綻が見られる。
騎士ローエングリンに傾倒するが、
彼自身は争いも好まないし、
むしろ大きな子供に過ぎないようにさえ見える。
ルイ14世に憧れていたようではあるが、
彼のように臣下をうまく操縦して
良き治世を行うようにはどうしても見えない。
ローエングリンにしろルイ14世にしろ、
ルートヴィヒはそれらの美しい部分しか見ておらず、
彼らの苦悩や暗部(ローエングリンは創作だから致し方ないだろうが)を
まっったく見ようとしていない。
だからこそ、現実の醜い部分に直面すると、
ルートヴィヒはあっさりと壊れてしまう。
文化面における彼の功績は素晴らしいものがあるかもしれない。
しかし、上記の例と同様、
生まれてきた時代が悪かったと言うべきであろう。

作品としては、やや上滑り感が強いというか、
上っ面をさらっと紹介しただけのような印象が強い。
物語の抑揚が弱く(よく言えば抑制が効いているのだろうが)、
強烈な個性が生かし切れていない、
ボンヤリとした作品になってしまった。
まぁ、こういう為政者は、どこの国にも
1人や2人いるということだろう。

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