映画 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(☆☆☆)
こういう作品を観ると日本人はすぐ
「やっぱ株なんてやらない方がいい」とか、
「金持ちだからって幸せになれるわけじゃない」
とか言うんだろうね。
でも、玉石混淆のこの大市場があるからこそ、
立ち回り一つで大金を掴むことだってできるのである。
日本人が「大金を掴む」と言えば、
たいてい1枚300円の紙ぺらのこと。
これが果たして健全と言えるんだろうか。
今作の原作者であり主役でもある
ジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)は、
言葉を操る名人である。
だからこそ、今でも公演に呼ばれ、
今作のような作品を残すこともできるのである。
日本人の中にもモノをたくさん売れる人間はいる。
しかし、ジョーダンが売っていたのは、
言っちゃ悪いがクズ同然である。
儲からなかったら詐欺と言われるが、
儲かったら誰も訴えないどころか、
髪と崇め奉る者すらいるだろう。
人間の価値観や正義なんてそんなものである。
しかし、今作は『アメリカン・ハッスル』以上に長く、
しかもさらに下品(R18なのもうなずける内容)。
しかも、「飲む、打つ(やや意味が違うか)、買う」のオンパレードで、
確かにラリってヘロヘロになってる演技は
「さすがディカプリオ」と思わせなくもないが、
こちらも画替わりに乏しい仕上がり。
正直そんな品のない作品たちが
ゴールデングローブ賞やアカデミー賞で
有力候補ともてはやされてるのは、
ちょっとどうかと思ったりもするのだが…。
とはいえ、表も裏もこんなに派手に金を回してる国に対して、
日本は心臓(金を回すシステム)も
造血細胞(金を生み出そうという考えそのもの)も
明らかに負けてしまってるよね。
カネは、とにかくコンクリートにしてしまおう、
って感じだよね、日本って。
ジョーダンはとんだダメ人間である。
しかし、彼自身が言うように、
こんなダメ人間でも「カネさえあればいい人になれる」と言っている。
家賃も滞納して、息子の教育費を前借りしようとする
女性社員の話が出てくるが、
その時彼はそんな彼女に2万5000ドルの小切手をポンと切ってやるのだ
(彼女が前借りしようとした金額は5000ドル)。
金があるからって幸せになれるわけではない。
しかし、カネが無いために人が死ぬことだってあるのだ。
「足るを知る」ことは大事だが、
逆に言えばそれは自分の可能性にフタをする、ということでもある。
無限の可能性を説きながら、現状に満足せよと日本では教えている。
結果日本の若者はどうなったか。
ジョーダン・ベルフォートに比べれば、
ホリエモンや村上ファンドなんてかわいいもんである。
それで大騒ぎして日本そのものの可能性にフタをしたんだから、
日本もたいしたタマである。
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