映画 『さよなら、アドルフ』(☆☆)
ひとりの人間が死んで、立場が逆転してしまう悲哀を、子ども視点で描く作品。
とはいえ、長女のローレ(サスキア・ローゼンダール)は、
しっかりとナチの教育を受けてしまっているため、
けっこう染まってしまっている。
そのため、旅の途中で出会うユダヤ人(実際にはなりすまし)に対して、
距離を取るというよりも嫌悪感を持って接してしまう。
しかし、移動が制限された当時の状況で、しかも持ち合わせも乏しい状況。
行動力(盗みを働いたりも含む)があり、ユダヤ人(になりすましている)彼は、
ぜいたくな生活に慣れた彼女たちの旅を支える上で
重要な役割を果たすようになるわけだが…。
ナチス幹部とはいえ、ナチスが実際に行ってきた行為の全貌を
教えられているわけではあるまい。
それでも、ユダヤ人は悪いとか、ゲルマン民族こそ選ばれた民族だとか、
そういう教育の形でナチスの政策の一端に触れてきたことは、
ローレの言動を見ればわかる。
しかし、その現実を知らされた時の反応が当初いまいち薄く
(その辺りがリアルと言えばリアルなのだが…)、
無事祖母の家に着いてからの外界とのギャップが、
ああいうラストを導き出すのだろうが…。
いちばんの問題は、ユダヤ人(になりすましていた)青年の正体が
全く分からないまま話が進み、そして終わっていこと。
そもそも、彼はなぜローレたちを追いかけていた(としか思えないわけだが…)のか。
そして、突然助け船を出し、さらに突然「もうオレに頼るな」と言って去ってしまう。
彼は一体何者だったのか…。
ただ、おそらくローレにとっては、彼が何者なのかはどうでもよかったのだろう。
旅を続けて行くうちに、異民族ではなく、
男と女(少なくともローレはそう思っていたと思う)
であり続けたいと思えるようになったのだろう。
彼の方が結果としてそれを拒んだわけであるが、
その理由についても言及されていない。
とにかく、モヤモヤ感がハンパない作品で、
その上「結局何が言いたかったのだろう?」ということになってしまう、
なんともウ~ンな作品。
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