映画 『大統領の執事の涙』(☆☆☆☆)
これは、特別だけど特別じゃない、家族の物語。
そして、アメリカの黒人たちの現代史
(当然、全てではないが)。
『ヘルプ』にしろ『42』にしろ、
彼ら黒人の現代史を堂々と語れるようになったというのが、
ある意味オバマ政権最大の功績と言えるかもしれない。
今作ラストでも主人公のセシル
(フォレスト・ウィテカー)が、
「この国は歴史の暗部に目を背け続けてきた」
と語っているように、
今作では民主主義の盟主たるアメリカの政権中枢で、
当たり前に行われてきた黒人差別の話が出てきたり、
ワシも名前ぐらいしか知らなかったKKK団の
活動なども描かれており、
確かにダイジェスト的な構成ではあるが、
公民権運動からオバマ政権誕生までの
黒人たちの歴史が見事に描かれている。
そして、そこに大統領の執事として働く父と、
そういう父に対して反抗し公民権運動に身を投じる
息子との相克という、
アメリカ映画お得意の「家族の映画」という構図を
持ち込んでいる。
確かに、お互いの立場は特別なものかもしれないが、
息子にとって超克の対象である父であったり、
いがみ合っていても息子の無事を祈らずにいられない
父親という構図は、
特別なものではなく普遍的なものであろう。
そういう意味では多面的な構成を持った作品であり、
つまり多面的な楽しみ方のできる作品であると言えるだろう。
ワシ的には、やはり歴史的価値の方に重きを置いてしまうが、
ファミリームービーとしても高く評価できる作品であろう。
特に、父親としてのセシルの背中には、
切なさがにじみ出ていて、いい味出しているのである。
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