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映画 『東京難民』(☆☆☆☆)

事前情報ほとんどなし(予告編すら未見)で観に行った映画は
久しぶりですが、タイトル通りの真面目な作品。
日本社会が内包しながら多くの人々が見て見ぬフリしてきている
諸問題を鋭く描き出した作品で、ある意味テレビではやれない
(反アベノミクスである以前に、まず数字にならないであろう題材)、
つまり映画ならではの作品ということができるだろう。

母が病死、父はフィリピン人とトンズラ。
そんな中、福岡生まれで東京の大学に通うオサム(中村蒼)は、
日本の大学生にありがちなちゃらんぽらんな生活を送っていた。
しかし、父親からの送金が途絶え、
授業料を滞納して大学は除籍
(中退ですらなく、最初からいないことにされる)、
住んでいたマンスリーマンションからも即日退去を命じられ、
身一つでコンクリートジャングル東京に投げ出されるわけだが…。

聖書に『人はパンとワインのみに生きるにあらず』
(作中では『パンのみ』と省略)という言葉がある。
一般には、
もっと大事なものがある的な用法で用いられるこの言葉であるが、
裏を返せばこの二つをことさら持ち出さねばならないほど、
『パンとワイン』、つまり食うことは生きることと
切り離せないことを示していると言えるだろう。
また、『管子』には『衣食足りて礼節を知る』
(作中未出、正確にはもう少し長い)という言葉がある。
オサムが部屋から叩き出された直後、
そのマンションの1階に干されていたジーンズを盗むシーンが出てくる。
何も知らない学生(だった)オサムも、
住むところを失い生活の深刻な危機を迎えれば、
普段は考えもしないような悪事も簡単に行ってしまえるのである。

この国では、1度脱線すると元のレールに戻るのは簡単ではない。
新卒一括採用。
年功序列賃金体系。
辞めさせにくい会社の人事体系。
これらが、良くも悪くも戦後の『家族的企業文化』を生み出してきた。
会社に所属する人間は家族同然。
しかし、そうでないものに対する扱いは厳しく、
バブル以前ならともかく現状において
「再雇用」という言葉も空手形に過ぎない。
さらには、「射幸心を煽ってはならない」と言いながら、

宝くじを含む全てのギャンブルは国家が独占して運営している
(パチンコやパチスロとて例外ではない)。
結果、風俗業に身をやつすぐらいしか格差突破の道は
残されていないのだが、
作中でも述べられているように、彼らこそ元祖ブラック企業たる
「ヤクザのフロント企業」である。

今や、住所よりも携帯電話の方が大事な世の中である。
それでも、住所が無ければ警察に疑われるし(コレは作中にも出てくる)、
両方維持するとなると資金面でけっこうな苦労を強いられるわけである。
『無縁社会』とは言っても、生きるためにカネという媒介は不可欠である。
つまり、文明人は『黄金の鎖』というしがらみ
(絆という字のそもそもの意味でもある)でがんじがらめにされている。
一方で、カネの力で自分の居場所を作り、
カネの力でそれを無理やり維持している者もいる。
それこそ、「カネの切れ目が縁の切れ目」である(この話も作中に出てくる)。
カネ以外の絆を作らないと、
老後と言わず学生時代から無縁社会に突入する危険を
孕んでいるのである。

とりあえず実家住まいのワシは、
家族を大事にすることから始めようと思った。

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