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映画 『ローン・サバイバー』(☆☆☆☆)

戦争モノの映画を観ると、
断片的に『孫子』の一節が思い浮かぶワシでありますが
(今作では当然ボロボロ出てきたが)、
今回特に重要だと思ったのは、
『軍争篇』の中の「覇王の軍」の条件の一つである
「郷導を用いざる者は、地の利を得ること能わず」という一節。
地元の道案内を用いることができなければ、
地の利が得られない、という意味であるが、
それこそ太平洋戦争まではアメリカもこれを
忠実に実行していた(例:フィリピン)。
しかし、ベトナム戦争以降は、
すっかり敵地全体を敵に回してしまい、
全面殲滅をせざるを得ない状況に陥り、
ベトナムや今作の舞台アフガニスタン、イラクなどで
長期戦の泥沼に引き摺り込まれてしまう。
ベトナム戦争以降、メディアの氾濫により、
戦争報道のあり方が変わってしまったせいもあるが、
戦争おっぱじめておいて人道的も
クソもないような気はするわけだが…。
しかし、偵察任務で敵地に潜入するのに、
敵国語を全く理解できないで潜入するというのも、
ずいぶん不用心な話で、
だからこそ山羊飼いたちと理解を深めるどころか、
憶測で「殺すのはまずいから逃がそう」
みたいな危うい決断を下すことになるわけで…
(さらに言えば、いちいち本部の指示を仰がなきゃいけない、
っていう状況も『孫子』的には間違ってるわけで…
(なまじ通信が発達したせいでもあるが))。

閑話休題。
今作は、まず冒頭のネイビーシールズの
実際の訓練風景から引き込まれるものがある。
あれだけで、短編のドキュメンタリー1本
作れそうなぐらいの過酷さである。
で、それを踏まえての「レッドウイング作戦」突入なわけだが、
山羊飼いとの接触直前ぐらいからの、
あのヒリつくような空気感がいい。
そして、タリバンとの戦闘(と言っても、4人対200人じゃあねぇ…)。
じりじりと狭められる包囲網。
逃げ道は危険な崖下り(一歩間違えれば自殺ダイブ)のみ。
銃弾と、崖下りでマーカス(マーク・ウォルバーグ)ら隊員たち。
一人、また一人と脱落する隊員。
危険を推して援護に来た輸送ヘリが、
マーカスらの目前で無残に撃墜され、さらに一人になるマーカス。
とまぁ、たたみかけるように訪れる危機。
そして、ラストに向けての意外な展開。
ココでも結局言葉が通じないがゆえに、
自分を助けようとするアフガニスタン人の真意を計りかねるマーカス
(助けた理由がラストのテロップのみな理由もそこにあるわけだが…)。
エンタメとしても、実録ものとしても高次元でバランスが取れた良作と言えるだろう。

それにしても、あれだけ頻繁に戦争してて、
あれだけ戦争の研究も熱心にやっていても、
それが末端まで浸透してないってことだよね、これだけ失敗してるってことは…。
じゃなきゃ、アメリカが戦争のための戦争に血道をあげてる証拠なんだろうね。
アメリカもまた、進化どころか退化してるということだろう。

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