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映画 『ダラス・バイヤーズクラブ』(☆☆☆☆)

アカデミー賞で3部門取る前から、
内容に興味のあった作品がようやく公開。
感染者の大半が同性愛者だったことなどから、
差別と偏見に満ち溢れていた初期のエイズ。
今作の主人公ロン(マシュー・マコノヒー)は、
ゲイとは対極(むしろ毛嫌いしてさえいる)にいる、
無類の女好き。
ただ、その無秩序な性行為ゆえに、
おそらく行きずりの女からエイズウイルスをもらったのだろう。
ある時、医者にかかって血液検査をした結果、
HIVウイルスが見つかり、しかも医者の診断は「余命30日」。
「オレさまを30日で殺せるものなどこの世に無い」とロンは強がるものの、
薬を酒で飲み下すようなむちゃくちゃな生活で、
体はボロボロになっていた。
臨床試験中の薬を横流ししてもらえなくなったロンは、
紹介されたメキシコの医師から、アメリカで承認されていない薬を多数処方される。
おかげでロンは命を永らえ、
それ以来アメリカの法の網をかいくぐって
メキシコなどから未承認薬を密輸入し、
それを売りさばいてはいけないので、
購入権だけを売って会員に無料で配るという方法を思いつく。
おかげで、助かる人々が続出する中で、
既得権者であるFDA(アメリカ食品医薬品局)が、
ロンの暴走を止めようとするのだが…。

今作だけを観ていると、
少なくとも当時は日本同様なかなかの縦割り行政ぶりを発揮していたということ。
FDAは、別機関で安全性が証明されていた薬品についてさえ、
承認していなかったわけである。
おそらく、作中の指摘通り企業からの賄賂
(マイルドな言い方をすれば、「ユーザーズ・フィー」というシステム)
が絡んでいた可能性が否定できないわけである。
時を経たとはいえ、これらを公開するというところが、
さすがアメリカと言うべきであろう。

あとは、やはり当時のエイズに対する差別と偏見に関する描写であろう。
上記したように、ロン自身はゲイを毛嫌いすらする、
普通のアメリカ人である
(同性愛を罪とするキリスト教圏なら当然であろうが)。
にもかかわらず、エイズ感染がばれた途端に、
友人からも「ゲイ」扱いされる始末。
まだまだ謎の多い病気だったこともあるのだろうが、
ある意味この当時のロンの戦いがあったからこそ、
エイズ治療のアプローチに幅ができ、
治療の進歩に大きく寄与したと言えるのではないだろうか。

翻って日本である。
実は、日本は先進国で唯一エイズ患者が増えている国である。
性交渉、もっと言えば性に関する考え方が非常にクローズなこの国では、
性交渉による感染が多いこの病気を、
昔の「穢れ」同様に忌避する傾向が強いように思われる。
故に、検査すら受けていない
(ワシも、ほとんど性交渉が無いこともあって検査してないわけだが…)者が多く、
ヘタすると知らないうちにエイズウイルスをばらまいている、
なんてこともあり得るわけである。
このような状況では、
当然感染してもカミングアウトすることは相変わらず難しいであろう。

ロンは、ただ生きるために、国家にすら噛みつく羽目になった。
しかし、現代においても「命を守る」ということは、
このように苛酷なことなのであろう
(ワシはまだそういう状況になったことがないのでわからんが…)。
アメリカも、そして日本も含めて、
民衆のそういう切実な思いを、
国家は実際どれほど汲み上げられているというのだろうか。

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