映画 『ファイ 悪魔に育てられた少年』(☆☆☆)
愛の無い人間などいない。
問題は、その愛とやらがどの方向にどう向くかなのである。
俗な表現をすれば、「愛のかたち」が人それぞれにあるということであろう。
今作の「愛のかたち」は複雑である。
主人公のファイ(ヨ・ジング)は、
誘拐犯であり強盗集団である「白昼鬼」の5人と、
彼らの家で働く女性によって育てられる。
リーダーであるソクテ(キム・ユンソク)は、
ファイを「白昼鬼」のメンバーに仕立てようと、
犯罪のスキルを叩き込むが、
ファイには他人には見えない「怪物」が見えるという(その理由は不明)、
得意な若者だった。
ある時、「白昼鬼」が受けた依頼に同行させられたファイは、
そこの主人を殺すようソクテに命令される。
しかし、その主人こそ、実はファイの実の父親だった。
その事実を知った時から、ファイは暴走を始めてしまうのだが…。
ソクテは、強盗殺人集団のリーダーではあるが、
彼とて本当の意味で悪になり切れていない。
目撃者を一度は見逃してるし、
そもそもファイを今日まで育て続けてきているのである。
ファイを育ててきたのには、ソクテもまた「怪物」が見えた時期があり、
ファイにシンパシーを感じたからのようでもあるようだが、
彼が孤児院育ちのせいか子供に対する「愛のかたち」を知らない。
そのため、「自分も怪物になったら『怪物を見なくなった」からという理由で、
ファイにも同じ治療法を試すことしかできなかったのである。
ファイは、5人の親たちに敬意を持ちながらも、
外の世界で年相応の普通の恋愛を知ったり、
家の中の唯一の女性を守ろうと思ったり、
こんな環境にいなければ絵を愛する普通の青春を送ることができたろうに、
父親(特にソクテ)によって汚されてしまった。
環境が人を作る、という典型と言えるだろう。
今作の残念なところは、父親の数をなまじ増やしすぎたために、
父親たちの描きこみが全体的に浅くなってしまったことにあるだろう。
ファイの将来を真剣に考える親がいる一方で(じゃあさらってくるなよ)、
結局誰もソクテに逆らえないのだから、
別に多数派工作で父親をむ水増しする必要はなかったように思われる。
あと、後半に突然大事な情報が出てくるために、
導入部が結果的にどうでもいい話になってしまっているのもマイナスポイント。
アクションシーンは、キム・ユンソク絡みということもあって、
なかなか見応えのある仕上がりだっただけに、
もう少し物語としての踏み込みが欲しかった。
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