映画 『トランセンデンス』(☆☆☆)
敢えて邦題を付けるとするならば、
オマージュ的に『博士夫妻の異常な愛情』といったところか。
早ければ2050年代には訪れると言われている、
人工知能は人間の知能を超える「技術的特異点」
(作中にも「シンギュラリティ」という用語として登場する)が元ネタ。
技術的特異点以降の人工知能の進化は予想できない
(進化の速度や方向性も含め)ため、
その辺に想像力の入り込む余地がある。
実は、ワシもコレをテーマに小説書いてみようと思ったことが一瞬あるんだが、
もともとあまり理系脳ではないためあっさり挫折したんだが、
それでも「障がい者を取り込む」っていうところだけは、
今作でもエピソードとして登場していたので、
方向性としては間違ってなかったと思う反面、
先を越されたからやめといて正解だったな、とも思うわけですが…。
作品自体は単純に人間vsコンピュータという構図では測れない。
というのも、人工知能の爆発的進化のトリガーは、
妻であるエヴリン(レベッカ・ホール)が、
夫ウィル(ジョニー・デップ)の意識だけでも生かしておきたいという愛情
(この辺りがワシが付けた邦題とも関係してくるのだが)
から発していることにある。
その後、コンピュータにアップロードされたウィルの意識
(と言っていいのかもわからないのだが)はクラウド化し、
超高速処理によって思考を拡大していく。
さびれた町を丸ごと買い占め、
進化した頭脳で考案したスーパーコンピュータと、
ソーラー発電プラントにより、さらに研究を進めていく。
障がい者を治療し、肉体を強化し、
ナノマシンを仕込み、肉体を強化して、彼ら元障がい者たちを私兵化。
果ては肉体再生まで行い、最終的にはウィル自身の体を再生する。
それに対し、もともとウィルの研究に脅威を感じていたテロリストは、
ウィルを殺害(結果的にこれがウィルの研究を完成させてしまうのは、
実に皮肉的な展開なのではあるが…)。
人工知能化したウィルと、彼の同僚を取り込んで全面対決を仕掛けていくのだが…。
ラストが暗示する未来は、
逆説的に現代社会がいかにネットワーク化されているかを如実に示しており、
しかもある日突然そういう生活に突き落とされるわけである。
かと言って、進化したコンピュータに我々の人格まで委ねられるかと言えば…。
そもそも、人間の意識を電気信号化できるのか、
という基礎科学的な問題や、
なかんずく出来たとしてその電気信号化された意識が考えることが、
ベースになった人間と同じかという検証も、
作中では為されていないわけで
(その辺でエヴリンとマックス(ポール・ベタニー)との間に齟齬が生じるわけだが)、
そういう意味では今作で為された実験の成否は不明と言える。
ただし、人工知能化したウィルのやっていることが
完全に間違っているかと言えば、それもまた違うわけで、
彼はエヴリンが思い描いていた人工知能による地球の再生というものに、
真剣に取り組んでいたとする描写があり、
それは考えようによっては人工知能化されたウィルの、
エヴリンに対する愛情と取ることもできるわけで、
その辺の作りが非常に複雑なわけである。
さすが、クリストファー・ノーランら『ダークナイト』チームである。
人間の根源に迫るという意味で非常に重たいテーマであり、
また難解な内容であり、その辺が賛否を分ける作品であろう。
でも…、なんだろうこの既視感。
ちょっと前にもワシのレビューに書いた
「デビルガ○ダム」のコンセプトにそっくりなんだが…。
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