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映画 『朽ちた手押し車』(☆☆☆☆)

まず、今作が30年前に作られた作品であることに、驚きを禁じえない。
もともとの着想は安楽死問題に関する小さな新聞記事だったらしいが
(確かにその話がメインに来ているのだが)、
そこに認知症(まだ当時はそういう言葉を使わず「ボケ」と言っている)や、
老人介護問題(しかも認知症絡み)も絡めているため、
まだ高齢者問題がそれほど重大視されていない時代には、
内容が重すぎて大手が食いつかず、
実質未公開作品として昨年まで埋れていたようである。

父(三國連太郎)、母(初井言榮)、長男(田村高廣)、長男の嫁(長山藍子)、
長男の娘の5人が住む新潟の漁村。
父は元漁師で、今は長男がそれを継いでいる。
いつの頃からか、父は今で言うと認知症にかかってしまい、
所構わず用を足し、徘徊し、日に何度も飯を食う。
長男一家には半ば呆れられているが、
今や一家を実質的に取り仕切っている母の手前強くも言えない。
そこに、次男(誠直也)が東京からふらっと帰ってくる。
次男には以前妻子があったが、7年前の事故がきっかけでそれらを失い、
次男もそのためにこの田舎から不本意ながら飛び出していたのである。
しかし、元来都会暮しに馴染めない性分のようで、
今度こそはこの地に根付こうとするのだが、
その矢先に母が突然倒れてしまう。
検査の後筋萎縮性側索硬化症と診断され、
根治療法が無いことと余命半年から1年という宣告を長男はなされる。
長男はしばらくこのことを家族の誰にも秘密にしていたが、
呼吸困難を発症すると母は長男にたびたび「楽にしてくれ」と
弱音を漏らすようになる。
常識としての生命倫理がある一方で、
母の辛い姿を見るにつれいたたまれない気持ちにもなっていた長男は、
母を入院させると主治医に「なんとか母を楽にさせて欲しい」と
たびたび頼み込むのだが…。

筋萎縮性側索硬化症は、
今作から30年経った今でも根治療法が見つかっておらず、
もちろん安楽死の問題も現在に至るまで未解決である。
地方が舞台となってる今作であるが、
地方における介護問題は、認知症を含む医療問題と絡んで、
当時以上に厳しい状況となっている。
ラストのモヤモヤとした感じにはやや疑問があるが、
今作の先見性は評価されて当然のものであるし、
これに食いつかなかった当時の大手映画配給会社の
社会的使命にも疑義を感じずにはいられない。
「気骨のあるある作品」とは、こういうもののことを言うのだと思う。

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