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映画 『黄金のメロディ~マッスル・ショールズ~』(☆☆☆☆)

ワシはあんまり音楽のことに詳しくないので偉そうなことを言えないのだが
(じゃあ何で今作を観に行ったのか、と問われると、
「何か感じるものがあったから」としか答えられないわけだが…)、
とにかくいい作品である。
アラバマ州の田舎町マッスル・ショールズというところに、
忽然と現れた音楽スタジオ「フェイム・スタジオ」。
そこから生み出された楽曲には、なぜか魔法がかかったように
不思議なグルーヴを醸し出すのである。
なぜそうなるのか。その秘密に迫るのが今作なのである。

まず、このスタジオを作ったリック・ホールの波乱万丈の人生である。
若くして両親を失い、
憧れていた音楽業界から一度は弾き出されても、
負けじ魂を発揮して一念発起。
一心不乱に曲を作り、「フェイム・スタジオ」を立ち上げ、
ニューヨークやロサンゼルスの一流音楽レーベルと立ち回り、
有名無名を問わず様々なアーティストが、
このスタジオから珠玉の名曲を生み続ける。
その人生模様がまず素晴らしい。

次に、この土地がもともとネイティヴアメリカンの聖地であり、
彼らから「歌う川」と言われたテネシー川を擁する、
今風に言えば「パワースポット」であることである。
作中随所に差し込まれるマッスル・ショールズの美しい景色もまた素晴らしく、
こういういい土地がいい音楽を育むということが、また良いのである。

第三に、公民権運動が始まっていたとはいえ、
まだまだ黒人に対して差別の厳しい時代に、
人種の垣根を軽々と越えて素晴らしい音楽を作り続けてきた、
そんな時代的背景がまた素晴らしい。

さらに、元はフェイム・スタジオのリズムセクションだった
「スワンパーズ」が独立して作った
「マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオ」の存在である。
当時の音楽業界のパワーバランスの中で、
袂を分かった両者ではあるが、
サウンド・スタジオはサウンド・スタジオでいいものを生み出し、
フェイム・スタジオもまた新たなリズムセクションを築き上げて、
サウンド・スタジオに負けないいいものを生み出し続けるという、
良きライバル関係を構築したことで、
マッスル・ショールズ・サウンドをさらなる高みに押し上げたという、
この絶妙な関係性がいいのだ。

DVDでの鑑賞でもいいが、
鑑賞に当たっては是非音質にこだわってもらいたい。
一つ一つの楽曲が、まず必聴であるから。

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