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映画 『蜩ノ記〈ひぐらしのき〉』(☆☆☆)

時代劇に様式美を求めるなら、
今作ぐらい本格的に「小笠原流礼法導入」とか謳ってほしいわけである。
どうせクソ真面目に作るなら、こういうこだわりは重要なウリと言えるだろう。

ただ、原作はどちらかというと手法としての「ミステリー」を使い、
10年後の切腹を申し渡された戸田秋谷(役所広司)が、
切腹を申し渡されるに至った真相を本来監視役であるはずの
檀野庄三郎(岡田准一)が解明していくという話(原作未見なのだが…)。
とはいえ、ラストがラストなので(原作では後日談も触れてるのかもしれないが)、
真相を暴いたことで檀野や秋谷の息子がどうなったかについては触れられず。
ただで済むとは思えないと思う一方、
秋谷に下された罰(真相がわかれば罰の内容もむべなるかなと思うが)や、
冒頭の檀野に下される罰などを考えると、
良く言えば寛容、悪く言えば甘々な藩のようなので、
それほど冷遇されずに済むのかな、とも思われ…。
まぁ、話の本筋はそこにないので、取り上げるまでもないということなのだろう。

話自体、結末が割とわかりきっているので、
過程を楽しむタイプの作品であり、また様式美を楽しむ作品なのではあるが、
上映時間のわりに内容が薄く
(しかも、特段削れそうなエピソードが無いのがタチの悪いところ)、
しかも邦画の悪いところである「予告編で大事なところにほぼ触れてしまう」を、
今作でもやっているため秋谷が悪くないことは
予告編だけでわかってしまう超親切設計。

最終的に家老が完全に悪役で、
「民の痛みを知るがいい」とばかりに秋谷に一発殴られてしまうが、
それには賛否がある。
『孫子』曰く(今作では『論語』がたまに出てくるが)
「愛民は煩わさるべきなり(民を愛し過ぎると心労が絶えなくなる)」である。
改革者は少なからず汚れ役を引き受けなければならないものである
(まぁ、秋谷はその辺よく心得ていたようだが…)。
その辺の描写が全くなく、ここまで悪役に仕立て上げなくてもいいのに、
とも思うのである
(確かに、相当な手練手管を使ってるのは確かだが…)。
そういう意味では、今作の黒い部分の大半をこの家老が引き受けているわけで、
その意味では見事大役を果たしたと言えるだろう。

日本映画は、もう少し予告編での情報の出し方を考え直した方がいいだろう。
今作のようなわかりやすい予告編ばかり作っていると、
観客の方から「DVDスルー」されかねないだろう。

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