« 映画 『ヘラクレス』(☆☆☆) | トップページ | 映画 『悪童日記』(☆☆☆☆) »

映画 『母の身終い』(☆☆☆☆)

いくつになっても、子供のことは心配でたまらない。
まして、自分の死期が迫ってる
(今作の場合、自分で設定してしまうわけだが)となれば…。
そういう意味では、『海洋天堂』と見比べて、
東洋と西洋の死生観を比較するという見方も面白いわけである。

数日前の産経新聞の曾野綾子さんのエッセイで
「(前略)法灯は厳格に厳しく、そして高く掲げられるものだ。
(中略)しかし、個人の暮らしでは、信仰は誰でも守れるものに基準を置く。
(中略)信仰は寛大なものである。(後略)」
と書かれていた。
『ユー・ウォント・ミー・トゥ・キル・ヒム』の時も書いたが、
キリスト教圏において自殺は宗教上の罪であり、
作中にも出てくるように大多数の国では自殺の幇助は刑法上の罪である。
一方で、認知症や植物状態をアイデンティティの喪失と考えて、
その状態になる前、すなわち個人としての尊厳を保っているうちに死にたい
「尊厳死」を認めている国もいくつかある
(今作ではスイスが登場する)。
息子アラン(ヴァンサン・ランドン)は、金ほしさに危ない橋を渡って服役し、
刑期を終えて出所したばかり。
身を寄せた母イヴェット(エレーヌ・ヴァンサン)は、
アランの服役前から脳腫瘍を患っており、しかもすでに末期。
その上母は、尊厳死を真剣に考えており、
既に書類も揃えて準備万端といったところ。
どうやら、イヴェットの夫(=アランの父)が死んだときに、
ずいぶんと苦労をさせられたようなのだが、
息子そしてはそれが承服できず…。
しかし、病院側から「もう薬が効いていないようだ」という最後通告を受け、
母はいよいよ尊厳死に向けて最後の手続きを整えるのだ。
おそらく、息子も母も互いに迷惑をかけたくない、
そういう思いを抱きながら、それをお互い口に出せずに
この場に至ってしまったということなのだろう。
実際、病院のベッドの上で、チューブだらけにされて、
無理やり命を長らえさせるのは、看取る方にとっても、看取られる方にとっても、
決していい気持のするものではないと、
ワシの数少ない実体験からも言えるのである。
そういう意味では、ワシは尊厳死に反対ではないわけで、
しかも現実問題として世界的に見て数の多いといわれる
日本の自殺の原因の中で(あくまでも特定できるものだけだが)
「健康問題」を挙げるものが圧倒的に多いわけである。
まして日本は特定の宗教倫理がない国であり、
そういう意味ではもっと多様な価値観を提示できていいはずの国なのである
(だからこそ、毎年3万人前後の自殺者が出ているともいえるわけだが)。
逆にアランは、母親の病気を何とかしたいという思いで、
危ない橋を渡ったに違いない。
本当は、もっと大事なものがこの二人の間には必要だったんだろうけれども、
ガン治療は何かと金がかかる。
お互いそれがわかっているからこそ、
息子は危ない橋を渡り、母は自ら命を絶つことを考えたのだろう。

ただ、アランと火遊びする女性の話は、
あんまり意味なかったように思われるんだが、どうだろうか。

« 映画 『ヘラクレス』(☆☆☆) | トップページ | 映画 『悪童日記』(☆☆☆☆) »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 映画 『母の身終い』(☆☆☆☆):

« 映画 『ヘラクレス』(☆☆☆) | トップページ | 映画 『悪童日記』(☆☆☆☆) »

2020年7月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ