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映画 『テロ,ライブ』(☆☆☆☆)

いやぁ、こりゃ腐っとるねぇ。
マスコミも、警察も、政府も、もちろんテロリストも。
でも、日本も他山の石にするべき、そんな笑えない話。

主人公は、放送局のキャスター(ハ・ジョンウ)。
しかし、賄賂社会の韓国では出世のための贈収賄は当たり前。
彼もそれに手を染め、それが表沙汰になりそうになったため、
裏街道ともいうべきラジオ部門に飛ばされた。
そこで、朝の報道番組を始めたのだが、
そこにちょっとアタマのイっちゃってる男からの電話。
キャスターは面倒くさいと思い、電話を切ろうとしていたところ、
「これから橋を爆破する」
と突然言い出した。
冗談だと思ったキャスターは「どうぞおやんなさい」と言ったところ、
数分と経たぬうちに橋は爆破。
「とんでもないことが起こった」と思うと同時に、
今のやりとりが電波に乗ってないことを幸いと思い、
キャスターはテレビという表舞台に復帰すべく、
この男との通話を独占スクープにしようと企てる。
しかし、それが国家を巻き込む一大事に発展してしまうのだが…。

何が腐ってるって、まず放送局である。
キャスターの最初の対処もそもそも悪いのだが、
キャスターがこの話を自分の野心のために逆用しようとし、
上層部もその話に乗ってしまう。
挙げ句の果てに「どうせ橋の上に取り残された人たちは助からない。
だから、電話の男にいっそさらに爆破させて悪魔に変貌させてしまうんだ」
と、完全なる人命軽視。
さらに、キャスターの上司も「視聴率が70%超えたから、あとは好きにやれ」
という無責任ぶり。
その上、キャスターが上層部の思い通りにならないと見るや、
贈収賄の話を他局にリークして脅しをかける有様。
まさに「マスゴミ」の真骨頂である。

警察も警察である。
男が、大統領に謝罪を要求したところ、
ようやく現れたのが警察の一番偉い人。
しかも、「お前のことは調べ尽くした。
子供を政府の奨学金で学校に通わせておいて、
よくも政府を脅すようなマネができたもんだな。
とっとと自首しないと、息子にも顔向けできないぞ」
とものすごく挑発的な語り口。
挙句、この偉い人は殺されてしまうんだが、
実はこの時調べ上げた男がすでに死んでいたと後でわかる。
こいつら、いったい彼の何を調べたんだか…。

政府は、アメリカと同じく「テロとは交渉しない」の一点張り。
それでいて、最終的にはキャスターまで射殺しようとするのである
(おそらく、電話の男と共謀してたことにでもするつもりだったんだろう)。
しかし、真犯人がクライマックスで言う
「一言謝るのが、そんなに難しいことなのか」というセリフの通り、
正式に陳謝すれば済む話ではないのか
(もっとも、我々日本人からしてみれば、
「ホントに1回謝罪すれば済むのかよ」と思わないでもないんだが…)。
それとも、さらなる要求があるのではと勘繰ってたのだろうか。

電話の男も確かに問題はある。
2年前に死んだ父親のために、なぜ今突然動いたのか。
それに、かなり爆弾に関する知識があるのだ。
もう少し賢い方法論があったような気もするんだが…。
薄弱な動機で首都の大動脈である橋を破壊し、
10人以上のしかも無関係な人間の命を奪ったのである。
そのぐらいのこと、想像がつかないのだったら、
それはそれで病んでいると思うのだが…。

しかし、こういう手段に訴えなければ、
国家機構というものは話を聞かないというのも一理ある。
作中でも「警察は人が死なないと動かない」というセリフが出てくるし、
キャスターが提示する裁判という方法は、迂遠だし何よりカネがかかる。
貧乏人にとってはギャンブルに近いのである。
まして、韓国という国はそうモノを自由に言ったり書いたり
できない国のようであるから、
確たる証拠も無しに話をリークしても握り潰される可能性が高い。
今作のように追い込まれたら実力行使せざるを得ないのが、
現代世界であるとも言えるだろう。

今作では、権力(マスゴミも含めて)の欺瞞を鋭くえぐり出している
(映画界も、マスゴミの一翼ではあるわけだが…)。
フィクションとはいえ、権力に対して一石を投じるぐらいの価値は、
充分にある作品である。
こういう作品が札幌ほどの都市で2週間限定でしか公開されないというのは、
正直あまりいい気分ではない。

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