映画 『6才のボクが、大人になるまで。』(☆☆☆☆)
12年間の家族の成長と変化を、
わずか3時間弱の作品にするというのは正直乱暴な気もするが、
映画としてはこの時間は長いわけで、
観終わった後の最初の感想は「じっくり観たかったかな」
だったわけだが、その一方で『北の国から』を思い出して、
「テレビシリーズとかだったら絶対だれちゃうだろうなぁ」と、
すぐ思い直したぐらいで、結局この適度な物足りなさが、
逆に良いのかもしれない。
アメリカ映画の得意技である「家族の物語」なわけだが、
そこに定点観測的な視点を盛り込むのは、
それこそ『北の国から』の例を引くまでもなく、
興味を引くものがあるわけである。
しかも、アメリカのわりと一般的な家庭のありようをしっかり描いてるので、
覗き見的な面白さもあるわけである。
なんといっても、日本との大きな違いは、
家庭における父親の存在感である(功罪あるわけだが…)。
イーサン・ホーク演じる生みの父は、
離婚したといっても事あるごとに子供たちを外へ連れ回し、
やんちゃではあるが、だからこそ子供世代ともある程度話を合わせられるのだろう。
日本の父親の家庭内における存在感のなさといったら、
給料も銀行振り込みになってますます厳しいものがあるよね。
それは、女性の社会進出や社畜化、
生産性の低い会社労働と職住近接とは程遠い住宅環境など、
日本の都市社会が抱えるさまざまな歪みも関係しているだけに、
一朝一夕には改善されないものがあるわけである。
また、存在感がないがゆえに「子供に嫌われたくない」という心理が働くせいか、
距離を置く傾向が強いようだが、
むしろそこはリスクを取って子供と絡んでいかないと、
ビートたけし一家じゃないけど「おう、たけし」と子供に言われるように、
どうでもいい存在になってしまうわけで、
それは嫌われるよりもつらいことだと思うのだが、どうだろうか
(相変わらず、家庭人でないワシがよく言うよねぇ)。
もう一つは、やはり「パーティー」の存在だろう。
それこそ別れた旦那や、親や主催者の職場の関係者などが、
一堂に会する、いわゆる社交場であり、
そこでいろんな発言や、様々な階層の人と出会ったり、
話をする機会を得られる場所なわけである。
そこで、参加者は、プレゼン力や会話力を鍛えたり、
異文化に興味を持つ機会を得たりできるのである
(もちろん、男と女の出会いも、ね)。
日本では、今でこそ「街コン」みたいなものも行われているが、
あくまでも企業や自治体の仕掛けであるって、
自然発生的なものはそう多くないと思われる。
そもそも企画力の問題とかもあるのかもしれないが、
お花見なんかもっと横のつながりなんかあってもいいのかもしれないねぇ。
取り立てて大きなイベントが起こるわけではないが、
そういうことで無理やり盛り上げるのではなく、
普段のつながりの中から小さなドラマを積み上げていく、
というスタイルにむしろリアリティを感じるわけで、
少々概略的な作品になってしまったことが残念ではあるが、
うまくまとめてある作品ではあると思う。
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