映画 『世界一美しいボルドーの秘密』(☆☆☆☆)
ワシは、ウイスキーや焼酎のような、
蒸留酒を飲むことが多いが、
酒文化全体がわりと好きなので、
今作にも興味を持って取り組んでみたわけである。
ワインは、ビールと同様かあついはそれ以上に、
世界中で作られ、そして飲まれている酒であろう。
その中で、厳しい格付けを課し、
フランスワインでも最高峰に位置する産地ボルドーが、
今作の主な舞台となる。
2009、2010と2年連続でヴィンテージイヤーを迎え、
ワインバブルに沸き立ったボルドー。
しかし、それと引き換えに、
「高すぎて飲めない」、「もはや投資対象」という、
純粋な飲み物としてのワインではなくなってしまったと考える者。
逆に、「これが正当な評価」とする者もおり、
その状況がまさにバブルを生み出したと言えるだろう。
しかし翌年は、天候不順で原料であるブドウの収量も質も大きく落ち、
あっという間にワインバブル崩壊。
農産物としてのブドウの出来が、
ワインの評価を左右するという現実を改めて突きつけられたわけである。
それでもボルドーのワイナリーには、プライドがある。
「世界のどこかのデートで、我々のワインがテーブルの上にある。
そのワインのせいでデートが台無しになったとしたら…。
だから、我々には責任があるんです」
とまで言い切れるのである。
これほどの話を、日本の杜氏から聞いたことがない。
一方、リーマンショックで世界のワイン市場の主役は、
アメリカから中国に変わった。
ボルドーのワインを買い漁る者。
ボルドーのワイナリーそのものを買う者。
中国本国でブドウからワインを作る者。
それらを支えるのは、広大な荒地(ブドウは荒れ地の方が育つらしい)と、
13億という圧倒的な人口である。
「世界を食い尽くす」と言われている彼らだから、
「世界を飲み尽くす」ことだって当然考えられる。
しかし、それだけではなく、ちゃんと志を持って、
世界と戦えるワインを作っている人も登場する。
日本にもそういう人はいるが、
やはり全てにおいてスケールが違う。
物量戦になったら、日本が不利であることは、
あの戦争からも明らかである。
しかも資源と平地に乏しいこの国では、
人間の質を上げることがやはり急務であるといえるだろう。
前述したように、そして『マッサン』の主役のモデルである竹鶴正孝にしろ、
志の高い人々はこの国にも少なくない。
しかし、この国のシステムは、
彼らを充分に活かすように作られているだろうか。
もっと書きたいことがあるのだが、
そういう思索をもたらしてくれる、知的な作品である。
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