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映画 『おやすみなさいを言いたくて』(☆☆☆☆)

主人公は、女性戦場カメラマンである。
この、「女性」というところが今作のある意味ミソで、
もし男であったならば、これほど複雑な心象風景を持つ作品ではないことだろう
(『毎日かあさん』を観ればわかるだろう)。
しかし、女芸人(卑近にもほどがある例であるが)が、
女を捨てなければ芸能界で生き残っていけないように、
レベッカも女としての幸せ(こういう言い方自体あんまりよくないのかもしれないが)を
捨てなければ立ち向かっていけない世界なのである。
女性であるがゆえに立ち入れる場面ももちろんあるのだが、
ラストカットも含めて女だからこその
厳しい局面を突きつけられていることから考えても、
この主役設定自体がエンタテインメントとして成立させている要因と言えるだろう。

しかし、自分のせいで多くの人間を爆弾テロに巻き込んでしまい、
しかも自分自身も巻き込まれたことによって、
家族にも大いに心配をかけたその直後に、
「もっと撮ってこい」って言うマスコミも、正直どうかと思うわけである。
戦場カメラマンの使命は、医学博士のそれに近いものがある。
ざっくり言えば、「目の前のひとりより、何万人のため」ということである。
貧困や抑圧を受けている多くの人々の実情を知らせ、
しかるべき機関による介入を促すのが、戦場カメラマンの使命と言っていいだろう。
しかし、そのために時には目の前で消えつつある命の光を、
ただファインダー越しに見つめるだけ、という現実を、
時には受け入れられない時だってあるじゃないですか
(まさにラストカットなどはその顕著な例だろう)。
しかし、それを安全な場所にいて、アレは良い、コレはダメ、
とケチをつけながら、「もっと撮ってこい」である。
この辺の価値判断て、難しいところがあるよねぇ…。

今作のテーマの一つに、母と娘の関係性があるわけですが、
若干意識の高い娘が、軽い気持ちで「ケニアに行きたい」と言ったことから、
娘は母親の本当の姿を見てしまうことになるわけです。
母親は、実は母親である前に戦場カメラマンだったという本性を…。
母親は、目の前で起きている事件に対し、
娘の心配をよそに、「心配しないで、アンタは逃げなさい」と言って、
カメラのレンズをいいレンズに付け替え、、
戦場に飛び込んで行ってしまうのです。
娘の安全のハードルの低さがもたらした悲劇で、
言ってみれば娘の自業自得なのではあるが、
これがきっかけで家族は実質上崩壊。
家族の中に居場所を失った母親は、
一度は家族のためにやめると言った戦場カメラマンの仕事を、
再開して再び戦場に飛び込んで行ってしまうのです。
命のやり取りをする仕事というのは、
仕事を家庭に持ち込まないというのは、ある意味不可能である。
旦那さんのセリフじゃないけど、
「いつもお前が死んだときの準備をしながら、
お前を送りださなきゃいけない気持ちがわかるのか」である。

他にも書きたいこといろいろあるんだけど、
既に相当長いのでやめておきます。
考えさせられることの多い作品。

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