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映画 『シャトーブリアンからの手紙』(☆☆☆)

戦後70年というのは、洋の東西を問わないわけで、
『フューリー』だけでなく「あの戦争」絡みの映画が、
今年も少なからず公開されることだろう(今作は本国では2011年公開らしいが)。

今作で扱うのは、大戦初期。
ドイツがフランスを占領して間もない時期に起こった、
地方司令官暗殺事件が元になった虐殺を取り上げている。
そのドイツ軍の司令官は、フランス人の共産主義者によって殺された。
司令官自身、それほど悪い人物ではなかったようだが、
それでも支配者に対する抵抗の狼煙ということで殺されたのだろう。
しかし、事態を重く見た軍上層部は、
「事件の首謀者が出て来なければ、代わりにフランス国民150人を殺す」
という無茶苦茶な報復行動に出た。
今作の登場人物の多くは、その巻き添えになった人々なのではあるが、
同じ共産主義者も少なくなく、
クライマックスの処刑のシーンで
「自由万歳」から「ドイツ共産党万歳」とまで唱える者までおり、
少なからずテロリストにシンパシーを感じていた者もいるわけで、
その辺が良くも悪くもフランスらしさというか、
今に繋がる「際限なき自由の探求」という国民性に繋がるわけであるが…。
とはいえ、そのためにイデオロギーの何たるかも知らない子供
(その子供が主人公だったりするわけだが)まで殺してしまう
ナチスや、それを良しとしてしまうフランス人官僚のあり方まで含めて、
「負の歴史」と言っていいだろうし、
そこに向き合っているという意味では価値のある作品と言えるだろう。

しかし、この境地に至るまでに少々予備知識が必要な点が難点
(ワシは、映画を観てからネットで調べてここまで知り得たわけだが)。
しかも、個々の人物に深く立ち入っていないため、
なぜ暗殺したのか、から、
収容所に入れられるまでの過程がまったくと言っていいほど描かれておらず、
彼らが共産主義にどれほど入れ込んでいるかわからずじまい。
クライマックスで射殺される27人の中にも、
いろいろと温度差があるのはわかったが、
そうであればなおさらその中の何人かでもいいから、
収容所に入れられるまでの話をして欲しかったように思われる。
そういう意味では、事件を上っ面でしか捉えていない、と言えるわけである。

『ハンナ・アーレント』でも、
ユダヤ人の中にナチスに協力した者がいるという話があったように、
よく言えばうまく立ち回った者が今作の中にもいるわけである。
人間は、生きるために簡単に哲学を捨てられる者もいるし、
哲学を命よりも大切にしている者もいるわけである。
しかそ、命を賭けるに値するものに出会う間もなく、
今作のように若い命をむざむざ散らしてしまうというのは、
やはり大人の罪であると言えるだろう。
自由自由と声高に叫ぶのもいいが、
自分たちの自由だけを固守するのは、未来を縛ることにもなるわけで、
それはエゴ以外の何物でもないわけである。

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