« 映画 『真夜中のゆりかご』(☆☆☆☆) | トップページ | 映画 『和食ドリーム』(☆☆☆) »

映画 『ハイネケン誘拐の代償』(☆☆☆☆)

「裕福には2通りある。
莫大なカネを手に入れるか、多くの友人を得るか。両方はあり得ない」
この、フレディ・ハイネケン(作中ではアンソニー・ホプキンスが演じている)
の言葉が今作の全てを物語っていると言ってもいいだろう。
実際に起こり、未だ多くの部分が謎に包まれている、
1983年に起こったフレディ・ハイネケン誘拐事件。
当時、史上最高額の身代金が要求されたこの事件を、
犯人側からの視点のみで構成する今作。
犯行の全体像が見えにくいというデメリットを補って余りある
(そもそも、いまだにこの事件の全貌は掴みかねている部分が大きいのだが)、
堂々たる大富豪ハイネケンに振り回される5人の心象風景を
見事に描ききっている作品である。

犯人側は兄弟を含む5人の幼馴染。
兄弟の弟以外の4人は共同でビジネスをやっていたのだが、
資金繰りがつかず結局倒産。
人生の一発逆転を企図して行われたのが、この誘拐事件である。
しかし、それだけではなく、父親が元ハイネケンの従業員で、
今はリストラされたがハイネケン社員だったことに誇りを持つ父と、
それに反発する息子がいるなど、
実態はもう少し複雑だったようである。
その辺の歩調の違いと、冒頭の言葉、
一向に動きを見せない警察やハイネケン家側の不気味さ、
恐ろしくビジネスライクなフレディ・ハイネケン
(この人は、冒頭の言葉にもあるように悟りきってるよなぁ、ある意味)、
さらには人命を奪うか否かのせめぎ合いの中、
友情が崩壊していく、というのが今作のストーリーラインとなる。
今作を見れば、いかに犯罪が割に合わないビジネスかということがよくわかる。

一方で、カネが人間を人間たらしめる面があり、
反面カネで友情という社会的なつながりを崩壊させるという、
矛盾というか皮肉も今作から垣間見える。
彼らは全員懲役刑を済ませて社会復帰したが、
出所以降一度も行動を共にしていないという。
本編中でも、1人目の逮捕以降友人縁者が次々と逮捕され、
主犯格の男の婚約者には常時監視がつくありさまである。
日本でも一度逮捕されれば誤認逮捕でも人間関係が危うくなることはままあるし、
そういう意味でもカネとの付き合い方は考えていかないとけないと思わせる作品である。

本編終了後のテキストで、フレディ・ハイネケンは
この事件を機に世界有数の警備会社を立ち上げるという後日談が入る。
この人には敵わない、と思わせる商魂たくましいエピソードではないか。
「莫大なカネを手に入れる」、という意味で、
彼ほど徹底している人間は現代において、
特に日本ではそうそういないだろう。
他人とのつながりを大事にする日本人は、
彼の言を借りれば「金儲けに向かない」民族なのかもしれない。

« 映画 『真夜中のゆりかご』(☆☆☆☆) | トップページ | 映画 『和食ドリーム』(☆☆☆) »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134965/61757049

この記事へのトラックバック一覧です: 映画 『ハイネケン誘拐の代償』(☆☆☆☆):

« 映画 『真夜中のゆりかご』(☆☆☆☆) | トップページ | 映画 『和食ドリーム』(☆☆☆) »

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ