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映画 『ルック・オブ・サイレンス』(☆☆☆)

『アクト・オブ・キリング』のジョシュア・オッペンハイマー監督が、
同じテーマを逆視点で描くドキュメンタリー。
しかし、彼らは「アカ狩り」
(そもそも彼らが殺した対象の全てが「アカ」ではないことが問題なのだが)が
正義だと思ってやってるわけだから基本的に罪悪感がない、
ということを「アクト~」で証明して見せてるので、
逆視点にして彼らの罪悪感をあぶり出そうとするのが
今作の狙いになってしまうのだろう。
しかし、その「アカ狩り」から50年が経過し、
その間も狩った側はコミュニティの中枢に居座っているわけだし、
しかも主人公の親族も「アカ狩り」に参加してたりと、
朝鮮戦争を思わせる、イデオロギーに基づく同族相打つ構図があり、
形式だけとはいえ共産主義が戦後の国際社会に与えた影響を、
改めて思い知らされるわけである。

そんな共産主義陣営も今や斜陽を迎えつつある。
中国は市場経済を導入してバブル経済が破綻しかけているし、
北朝鮮は権力を世襲して共産主義を支配構造のための方便と化しているし、
キューバはアメリカと国交を回復し対立の構造は確実に弱まっている。
資本主義vs共産主義の目立った対立構造は既に破綻し、
資本主義(というよりアメリカ式民主主義)と
民族主義(主にイスラム的部族主義)の対立が
現在の対立構造の主要な部分を占めている。
とはいえ、もともと部族主義を煽っていたのはCIAだという話も無くはないし、
本当の敵や味方が何であるのか非常に不透明である、という情勢は、
今作にも通じる部分があると言えるだろう。

バラバラな民衆をまとめ上げるために共通の敵を作る、という手法は、
小は学校のイジメから、大は東西対立まで、
古典的かつ効果的な手法と言える。
しかし、それによって敵と認定された側にとっては、苦痛以外のなにものでもなく、
また時として力関係が逆転した際の社会に与えるダメージもまた計り知れない
(例:日本における戦後の混乱)。
しかも、今作においては決して大きくないコミュニティの中で、
そういった状況が現出してしまったわけで、
押さえつけている側が相変わらず力を持ち、
押さえつけられている側は相変わらず搾取されている。
確かに、「アイヒマン裁判」のような悪意の外部化が行われているのも事実だが、
それによって「持てる者」と「持たざる者」の構造が生まれてしまった以上、
個々人間による問題解決には限界があるだろう。
国家としての対策が待たれるところだろう。

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