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映画 『チャップリンからの贈りもの』(☆☆☆)

1978年に実際に起きたチャップリンの死体入り棺桶の盗掘及び窃盗事件
(死体相手に「誘拐」という語を使うのには語弊がある)を元にした
ヒューマンコメディ(という形態自体がチャップリンへのリスペクトでありオマージュ)。
ただ、作品のHPなどで見る限り、
事件の顛末そのものは実際の方が面白そうなので
(犯人からの電話にはすべて女優でもある娘さんが応対していた)、
今作ではあくまでも「ヒューマンコメディ」の部分を強調したかったのだろう。
確かに面白く作ってはいるのだろうが、
ムショ帰りの男と貧乏な移民(しかも奥さんが病気で保険にも入ってない)
という設定が切実すぎて笑えない部分もある
(ワシはむしろ、その辺が興味深かったのだが)。
チャップリン作品がもっとわかってれば面白く観られたのかもしれないが、
ワシは生臭な映画ファンなのでそういう意味では面白がれなかった。

で、ワシは何が興味深かったのかというと、
この国でムショ帰りの男や保健制度についてどういう認識を持っているか、
ということである。
今作では、ムショ帰りの男は確かに真っ当な仕事とは言い難いが、
それなりの仕事に就いており、周囲もそのことについて深く詮索しない。
一方で日本では、刑期を終えて出てきても、
なかなか社会復帰できないというのが実情である。
確かに、凶悪犯罪などでは世界の中には
日本以上に社会復帰しにくい状況を作っているところもあるが、
後述する税や保健料金の負担の不公平感とともに、
刑期に対する不公平感
((例)いつまでも「少年A」である一方、被害者はすぐに名前を明かされる)が、
加害者に対する反感を生む一因になっている気もする。
しかし、正直韓国や中国のことを笑えないのは、
我々だっていつまでも犯罪者のことを許さず、社会で受け入れない、
そういう土壌があることではないだろうか。
いかに刑務所や少年院で更生教育を施したとしても
(それがどれほどの効果をもたらしているかは、ワシはマユツバものなのだが)、
社会が彼らを受け入れなければ、教育の成果は発揮されない。
そして、今作で犯罪を犯す原因となった医療費。
日本では世界でも稀な「国民皆保健」により、
おおむね通常の医療費の3割という格安な料金で
様々な医療を受けられるようになっている。
しかし、それをいいことに年寄りは病院にたむろし、
用もないのに救急車を呼び(これはちょっと違うか)、
挙句の果てに税金を含めて「負担が重すぎる」のおっしゃる。
確かに、用途が不透明で、しかも明らかに説明不足なせいで、
負担感が払しょくされないことは事実だろう。
しかし、それによって自分たちがどれほどの利益をやすやすと受けているのか、
自分たちで少しでも考えたことがあるのだろうか。
世界では今作のようにたかだか腰痛の治療のために
何百万円(1978年当時の5万フランがどれほどかつまびらかではないが)も
必要になってしまうなて話、日本ではまずあり得ないことだろう。
日本とは、そういう国なのである(ワシは、あまり病院に行かない方だが…)。
ワシも、あまり日本に関しては良いことを言わない人間ではあるが、
今作を見ると「そりゃ、寄付を非課税にでもしないと助からない人間が多いだろうな」
と思わされてしまう。

ラストは、「弱者の味方」だったチャップリンらしい終わり方で、
最後まで「ヒューマンコメディ」らしい作品に仕上がっている。

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