映画 『ドローン・オブ・ウォー』(☆☆☆)
軍人さんの日常を描く今作には、コレと言ったクライマックスはない
(そういう意味では、『ハート・ロッカー』に近い作りである)。
しかし、問題は今作の中で繰り返される「日常」というヤツである。
妻子ある身で、自宅から職場である基地に通う。
基地に行ったらコンテナに入り、操縦桿を握り、画面とにらめっこ。
スピーカー越しに指令が下りてきたら、
安全装置を外し、狙いをつけ、ミサイル発射。
10秒ほど間を置いて、画面いっぱいに広がる砂ぼこり。
それが引いた後に残されるのは、ガレキと肉片のみ。
時間が来たらおうちに帰って家族サービスである。
これじゃあ、通いでゲームセンター行ってるのとそう変わらない。
しかし、これがアメリカの兵隊を家族に持つ人たちの望みを形にした、
新しい戦争の形の一つなのである。
自分たちに害をなす(かもしれない)人々を、一方的に殺戮する。
そりゃ、兵隊を派遣すれば死のリスクは当然負わなければならない。
しかし、敵(になるかもしれない人々)を野放しにしていたら、枕を高くして寝られない。
少し前なら大陸間弾道弾で無差別大量殺人、というところだろうが
(北朝鮮などはまだこの段階なわけだが)、
ソレは人道的に問題があるから…、
というのでこの方法に行き着いたというわけである。
アメリカでは、今や「Fuck you」(中指立てるあのポーズ)の
映像にすらモザイクがかかる有様である。
そうやって一般社会では徹底的に残酷描写から人々を遠ざけてる一方、
軍隊に入れば画面越しに人殺しを見させられるわけである。
しかも、手を下してるのは自分自身なわけで、
むしろ日常で遠ざけられてる分免疫が無く、PTSD的な症状になる人だっているだろう
(今作の主人公は、どっちかというと『アメリカン・スナイパー』の主人公と同じく、
非戦闘員を殺してるという罪悪感に苛まれているようだが)。
戦争をやる以上、軍人は死から逃れられないのである。
殺さなければ殺されるのである
(今作では、9・11を例に上層部がそれを過剰に煽ってるわけだが)。
それに、なまじ自宅通いゆえに、煩わされなくてもいいものに煩わされてもいる
(家族サービスや日常の軽い犯罪)。
その上で、国民から非難されるわけである。
軍人さんからすると、いろんな意味でやってられない気持ちにもなるわなぁ…。
翻って、日本である。
これから、ヘタすりゃ戦場に兵隊を送らなければいけなくなるような法律を
作ったわけである。
しかも、いまだに70年前の事を引きずるようなセンチメンタルでナイーヴな民族である。
戦場に行ったら、PTSDぐらいで済むんだろうか。
帰って来たとたんに自殺者続出とか、そんなことにならないだろうか。
そうならないように、この国はキチンと世話を見られるんだろうか。
幼児や老人の世話も満足に見られないようなこの国で。
そういうことも考えた上で、あの法律を作ったんだろうか。
何だったら、アメリカから軍事用ドローン大量輸入とか、
国産軍事用ドローン大量生産とか考えた方が良いかもね。
それなら、引き籠ってる人材がぞろぞろいるし、
そうなれば「全員活躍社会」が本当に訪れるかもね。
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