映画 『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』(☆☆☆☆)
アメリカで、同じ時期に多発した服のトラック強盗事件をもとに、
石油業界に舞台を置き換えて作ったのが今作。
高邁な理想(今の日本のような非武装平和主義)を掲げる
経営者(オスカー・アイザック)がそのトラック強盗や、
それに伴う風評被害、さらに検察からの会計不正疑惑
(コレがいろんな意味で重大な問題となるのだが…)に苦しめられ、
事業拡大の好機を失いかける。
そこから経営者は、事業拡大のための資金繰りに奔走されるわけだが…。
理想を掲げるだけでは、単なる絵空事に終わってしまうことが多い。
例えば今作では、経営者は
「従業員はオレが守る。だからみんなは武装してはならない」だの、
「世の中はきっと良くなる。だから武装しなくたっていいんだ」だの言っているが、
実際に矢面に立たされるのは現場の従業員なのである。
明日襲われるかもしれないのに、「いつか」なんて待てるわけがありません。
また、経営者の奥さんジェシカ・チャステイン()が、
ギャングの娘で、よく言えばしっかり者なのだが、
経理学の知識に乏しく彼女が「ヘソクリ」のつもりでせっせと貯めたおカネが、
実は「着服」になっていて、しかも夫には秘密でやっていたもんだから
夫婦ゲンカになるわけですが、
コレもキレイな商売をやるために
夫がムチャ(多分相当綱渡りな資金繰りしてたんだろう)をいっぱいしてたからで、
奥さんなりの考え方があったわけなんだが、
当時は会計士みたいな存在っていなかったんかねぇ。
だったら仕方ないかもなんだけど、
もし会計士が成立してるんだったらキレイな商売をやるためには必須だろうし、
そういう意味で夫は「上しか見てない」タイプと言えるだろう。
経営者たる者、やはり「清濁併せ呑む」器の大きさが求められるのは、
こういう事例でも明らかと言えるだろう。
その意味では、この経営者は事件をきっかけに一皮むけた、と言えるだろう。
会社経営はきれいごとだけでは行えないが、
特に「コンプライアンス」にうるさい現代においては、
汚いことをやっていては市場から容赦なく排除される。
そういった、経営の現実が見事に活写されている佳作だと思う。
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