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映画 『独裁者と小さな孫』(☆☆☆☆)

今作の予告編を見てから、「革命のその後」について自分なりに考えていた。
元祖無血革命の「名誉革命(イギリス)」はともかくとして、
もっとも有名なフランス革命にしろ、
明治維新(本来革命に括るべきではないのだが)にしろ、
共産主義革命の「ロシア革命」にしろ、
いわゆる「アラブの春」にしろ、
決して民衆がより良い方向に行っているとは言えないわけである。
・フランス革命
革命後、ギロチンによる粛清の嵐が吹き、結果的にナポレオン帝政を招来
・明治維新
度重なる飢饉で幕府財政も逼迫していたところに、
内戦が起こり、また秩禄問題(今の年金問題にも通じる)で新政府財政は
その初頭からあっぷあっぷ。
・ロシア革命
特にレーニンの死後首班に就いたスターリンの性格ゆえか、
首班就任前後から度重なる粛清による恐怖政治がはびこることに
・アラブの春
革命を起こした人々に政権ビジョンが無く、結果的に無政府状態に。
さらには、いわゆる「イスラム国」の台頭を招き、世界を混乱に落とすことに

とまぁ、作品とあまり関係ない話から始めたが、
今作はまさに革命を起こされる側にとっての「革命のその後」の話である。
独裁者である祖父は、ある程度状況を飲み込んでおり、
家族を巻き込みたくないがゆえに海外へ逃がそうとしたのだが、
純粋培養された「ワガママ殿下」の孫が、
「おもちゃも持って行きたい」だの
「マリア(御学友ってやつだなぁ)は一緒に行かないの」だのと
ダダをこねまくって居残ったために、
二人で革命のただ中で逃亡生活を送ることとなる。
言ってみれば、そのロードムービーなわけだが、
独裁者の住む首都と、逃亡中に見るそれ以外とのギャップなどは、
まさに隣国北朝鮮を見るようである。
その中を祖父と孫は旅芸人に身をやつして逃げ回るのだが、
その中で祖父は過去と否応無く対峙させられ、
孫は人の生き死にの現場を目の当たりにしていくわけである。
特に、クライマックスにつながる政治犯たちとの道行きが興味深い。
彼らの中には、祖父にとっては息子であり、
孫にとっては父である一族を殺したテロリストも混ざっており、
祖父はそのテロリストを背負って移動するのだ
(拷問の影響で足に大けがを負ってるため)。
祖父は「殺したい」という気持ちを抑えつつ(正体がばれるせいでもあるんだが…)、
その男を自宅まで送るのだが、
そこである意味本当の悲劇が起きてしまう。
また、彼ら政治犯こそが祖父と孫の命を握るキーにもなってくる。

独裁者は確かに危険な存在であり、
今作冒頭に描かれるような行為は愚かそのものではあるが、
真っ先に裏切る軍人や、明確な政策ビジョンを持たず、
単に復讐のために革命を起こす民衆なども問題である。
「政治」や「革命」の本質を突いた佳作である。

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