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映画 『白鯨との闘い』(☆☆☆☆)

世界的名作『白鯨』のもとになった、
太平洋のど真ん中で本当に起きた実際の事故であり事件を、
作者が最後の生き残りから聞き書きしているという体裁で描く作品。
実際の事件の顛末はもちろんのこと、
作家としてより深い作品作りをするべく奮闘する作者と、
「あの事件」を引きずっている最後の生き残りが、
各々の目線で「あの事件」と向き合い、そして次の一歩を踏み出す、
という話も盛り込まれているのが心憎い。

「あの事件」は、食うに困ったら誰でも一度は考えることだし、
結局生きるためには食わなければいけないわけだから、
倫理(一般道徳も宗教道徳も含む)的にはともかく、
生きるためには許される行為だとは思う
(ワシが観た映画の中では『アライブ-生還者-』の例もあるし)。
しかし、当時(19世紀中葉)の倫理ではやはり許されない行為なんだろうね。
しかもラストで明かされることだが、捕鯨業界を守るために
この事故のことを闇に葬ろうと考えていた
(いくら肉がたくさん取れるからといって熊を獲ろうとするような
蛮勇の持ち主はそういないだろう)わけで
(しかも、結局は明るみにされるし…)、
この事件のことは色々な意味で語りたくない話だったんだろうね。

しかし、労働法制の整備されてない時代の話とはいえ、
捕鯨業界のブラックぶりはなかなか厳しいものがある。
1頭で相当多く取れても50樽ぐらいの鯨油を、
1度の航海で1500樽とか2000樽とか取ってこないと船長に昇格させない、
という厳しいノルマ。
しかも相手は季節ごとに移動するクジラである。
群が通過するシーズンを逃したら全く取れないわけだし、
その間乗組員は食わせていかなきゃいけない。
その上、相手は子連れで移動するクジラである。
気概を加えれば、当然歯向かってくるだろう。
言ってみれば、生死と隣り合わせなわけである。
そういうことはある程度織り込み済みなのか、
船の構造もそれなりに考えてある
(母船が壊されたら、そのマストから帆を取り、小舟につけられるようにしてある)。
さらに今作内で起きている不幸は、
お坊ちゃん船長と、先のノルマを課せられた出世欲まみれの一等航海士の存在である。
出航時期が遅かったため、遅れを取り戻そうと帆を目一杯広げたところに嵐襲来。
ようやく立て直したものの、完全に出遅れてしまい、
近海のクジラは他の船に取られた後だった。
クジラを追って彼らは大西洋から太平洋へ。
既に航海は一年を経過していた。
ようやく、太平洋のど真ん中でクジラの大群(とともに白い巨鯨の存在)を
目撃したという噂を聞いた彼らは、勇んでその海域に向かったが…。
その後の顛末の多くは『白鯨』で語られている通りである。
ゲームの『大航海時代』シリーズをやっている諸兄なら知っていると思うが、
太平洋のど真ん中は凪(無風)が多く、
ある意味暴風雨以上の恐怖があります。

今作を見る限り、アメリカ人に「捕鯨禁止」と言われる筋合いは無い、
としか思えなかった。
いろいろと丁寧に作ってあると、ワシは感じた。

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