« 映画 『モンスターズ/新種襲来』(☆☆☆) | トップページ | 映画 『裁かれるは善人のみ』(☆☆☆) »

映画 『ブリッジ・オブ・スパイ』(☆☆☆☆)

実話を基にした作品であり、主人公のドノヴァン弁護士(トム・ハンクス)自身、
素晴らしいタフネゴシエーターであり、
素晴らしい法の守護者であるわけだが、
ワシとしては米ソのスパイの使い方の方に目が行ってしまった。
スパイの扱い方といえば、古今の歴史を見ても『孫子 用間篇』が
もっとも体系的に文章化されているわけだが、以下その一節。
『間より親しきはなく、賞は間より厚きはなく、事は間より密なるはなし』
『聖智にあらざれば間を用うること能わず。仁義にあらざれば間を使う事能わず。
微妙にあらざれば間の実を得ること能わず。』
孫子では、君主と間者はとても親密でなければならず、
また、賢くて細かな配慮のできる君主でなければ間者をよく用いることはできない、
と説いている。
しかし、今作で描かれる間者、すなわちスパイの扱いというのはこの逆である。
米ソどちらも「ウチのスパイはきっと機密を漏らしたに違いない」
と疑ってかかってるのである。
そもそも、そんなスパイだったら送っちゃいけないし、
その程度の育成しかできないんだったらスパイなんか使っちゃいけないわけである。
だから、こんなしちめんどくさい交渉ごとになってしまうわけである。
やはり、『孫子』は時代の風雪に堪える名著である、と言えるわけだが、
国家という機構がここまで巨大化しシステマチックになってしまうと、
君主(大統領であり書記長)と間者(スパイ)の繋がりが、
孫子の時代のようには行かないわけであり、
そういう時代に旧来のスパイの使い方をしようとすると、
今作のような齟齬を生んでしまうわけである。
また、まだ宇宙時代に入っていないため、
超高高度から飛行機と超望遠レンズで撮影する、
みたいな現在から見るとずいぶんアナログな方法を使ってたり
(で、このような失敗を経て米ソとも宇宙開発を真面目に考えるようになったのでは、
と考えてみたり…)、
コインを使ったスパイグッズなど道具立ても当時を投影していて興味深い。
当然、ドノヴァン弁護士とアメリカ法曹界の法に対する温度差とか、
そういうところを追っていくだけでも充分面白い出来になっている。
『杉原千畝』もそうだったが、
彼らが単に善意だけで人助けしてるわけではない
(そういう話は『韓非子』に出てくる
(棺桶屋が、人が死ぬことを願うのは単にそうでないと棺桶が売れないからであって、
彼が悪人だからではない))
という陰陽織り交ぜた作品作りが面白いわけで、
一面しか提示できない映画では極端な話「プロパガンダ」にしかならないわけである。

« 映画 『モンスターズ/新種襲来』(☆☆☆) | トップページ | 映画 『裁かれるは善人のみ』(☆☆☆) »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134965/63050028

この記事へのトラックバック一覧です: 映画 『ブリッジ・オブ・スパイ』(☆☆☆☆):

« 映画 『モンスターズ/新種襲来』(☆☆☆) | トップページ | 映画 『裁かれるは善人のみ』(☆☆☆) »

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ