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映画 『十字架』(☆☆☆☆)

重松清原作のイジメ関連作品。
2008年からやってるワシの「勝手に映画賞」の最初の大賞作
『青い鳥』以来のテーマである
(あの頃は、まだ年に20本とかしか観てなかったんだよなぁ)。
今でも印象深い作品で、そういう意味では選んで良かった作品なわけだが、
重松清氏のイジメ関連作品はホント心にズンと来る。
今作では、もうある意味登場人物ほぼ全員に責任があるんじゃないかってレベル。
つまり、「イジメ」って社会的病理だと思うわけです。
まぁ定番で、死んだ子の所属したクラス全体と学校が槍玉に挙げられるんだけど、
だいたいイジメの中心にいた数名に対して、
他の子たちは何もできないっていうのが通例であり
(そりゃ、自分たちだってイジメの対象にはなりたくないだろうし)、
また担任教師もクラス内の治安維持のためにそれを黙認、
もしくは積極的に容認しようとさえするのである。
学校の上層部(校長とか教頭)は、典型的な事なかれ主義者
(というより、そうでないと出世できないんだから仕方ない)で、
しかも個々のクラスという「閉じた社会」の深奥まで目が行き届くわけがない
(担任でさえそうなんだから)。
そういう学校を、父母会などが責め立てるのだが、
いじめてる、もしくは傍観していたのは、他ならぬ彼らの息子らや娘たちなのだ。
その事実に目をつむり、学校をつるし上げる光景は、
まさに彼らの息子や娘がいじめられっ子を吊るし上げている光景と同じなのである。
そんな親たちだから、イジメに積極的、あるいは消極的に
関与する子どもに育ってしまうのではないのか。
もっと無責任なのはマスコミである。
彼らときたら、完全に部外者である。
にもかかわらずしたり顔で、しかも集団で押し寄せてきて
「今の気持ちは?」などというデリカシーのかけらも感じない一言を浴びせかける。
どうせ、彼らの無責任な取材を、スタジオで物憂げな顔でこねくり回した挙句、
結局毎度毎度別の話題で押し流すのである。
さらに、今作ではいじめられっ子の親も問題アリである。
母親はどうやら気づいていたようだが、
それを聞いた父親は結局なんの手立ても下していない。
その結果いじめられっ子は庭の柿の木で首つり自殺をするのだが、
玄関の傍にあるその柿の木を、仕事帰りの父親はあろうことかワンスルー。
書斎に入り、窓を開けて、
ようやくその窓の先にある柿の木で異変に気付くという有様である。
正直、この親に「なんのための学校だ?」などと指弾する資格はない。
ワシなら「じゃあ、なんのための親だ?」と反論してしまうだろう。
その上、首つり死体にすがりつき、泣き叫ぶ母親の声を聞いても、
近所からただの一人も出てこない。まだ午後7時だよ。
しかも、9月4日っていうから、まだけっこう日が長いはずなのに…。
ホント世知辛いというか、近隣への関心が薄れたというか、
コミュニティが機能してないよね。
こんな社会では、イジメなんて無くせるはずがない。
中盤以降は、いじめられっ子に遺書で名指しされた男の子と女の子の
心象風景が中心なのだが、
これまたいじめられっ子がずいぶんと厳しい置き土産をしていったものである。
男の子の方は、幼馴染だが遺書にあるような「親友」という認識は無く、
当時も同じクラスにいて消極的にイジメに加担(要するに傍観者)していた。
そんな彼が、やがて子を持つようになってはじめて、
いじめられっ子が自分のことをなぜ「親友」と書いたのかを理解して、
再び当時の自分たちの関係について向き合うことになる。
女の子の方は、当時別のクラスで彼に片思いされていたが、
当然彼女の方にはその気は無く、
自殺寸前の電話でもつれない態度を取ってしまった。
彼女はそのことを原罪のように引きずり続けてしまうのである。

イジメなんて、軽々しくやるものではない。
しかし、そのきっかけはいたって小さなものである。
だからその芽をしばしば摘み損ねるわけで、
気がついたときには手遅れ、なんてこともまたしばしばである。
それは、子ども社会の「閉鎖性」に起因するわけだが、
そもそもムラ社会を長くやってきた日本は、
こういった「閉じた社会」が生まれやすい土壌にあると言える。
…、とまぁココまで書いて行くと「もうイジメは起こる確率の方が高い」
ぐらいの感じで対処した邦画良いのではないかとさえ思えてくる
(この考え方こそ「マスコミに毒されてる」と言えなくもないのだが)。
テレビの世界でも昨今パワハラが指摘されているように、
日本社会全体がブラックで、先にも挙げたような「寄ってたかって」
みたいな構図も散見される。
日本社会の性善性や無謬性を信じるのではなく、
もっと真面目に社会の暗部と向き合う必要が、この国にはあると思う。

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