映画 『みんなのための資本論』(☆☆☆☆☆)
ビル・クリントン政権で労働長官を務めたロバート・ライシュが、
自身の研究をもとに資本主義の現状を説く作品。
正直、かなり良くできてる。その辺の経済学の新書1冊買うよりも、
よっぽどためになる。
彼自身もやはり格差そのものの問題よりも、その流動性がなくなって、
階層が固定化することの方を恐れているし、
デフレの真の恐ろしさも説いている。
デフレになると何がいけないかというと、
本来雇用を創出する主体となるべき消費者が、
自らの手でその雇用を減らしてしまうということなのだ。
しかし、こう書いてしまうと「消費礼賛」みたいな話になってしまうんだよねぇ。
そして、今作ではその分水嶺を「グローバリゼーションとIT化」に見ている。
日本のモノづくり凋落の原因もそこに見ることができるように、
この問題は実は世界全体の問題と言えるわけである。
IT化による高効率化は、労働市場から雇用を失わせ、
グローバリゼーションによる世界的な部品調達は、
垂直統合(部品製造から販売まで自社グループ内で一貫して行うこと)的企業体に
致命的なダメージを与えた(シャープや東芝の体たらくは顕著な例)。
作中にも出てくるトマ・ピケティの『21世紀の資本論』でもあるように、
富める者はますます富み、貧しい者はますます搾取され続ける。
なぜなら、今やカネの力で政治を左右できるようになってしまったから
(そういう意味では、ドナルド・トランプの台頭などは必然なのかも…)。
また、日本の悪いところは、自民党が右から左まで勢ぞろいの
「自己完結型政党」だからとも言える。
4月から電力自由化になるようだが、
それを例に取れば地熱や太陽光発電から原子力発電まで
なんでもやる「自由民主電力」からしか電力が買えない状況ということ。
国民は、ホントのところ「原子力発電はイヤ」と思っているが、
「民主電力は停電リスクが高いから」という理由で
結局自由民主電力から電気を買ってる、という状況なのである。
先にも述べたように、我々消費者が資本主義経済の主役なのである。
それは、主権在民の民主主義政治の主役が我々国民であることと同じである。
しかし、実は多くの民衆はそのことについて未自覚である。
だから、必要な消費まで絞ってデフレ経済に加担してしまうのである
(これを「合成の誤謬」というのだが)。
適正なコストを支払い、適切な投資(作中では特に教育への投資を重視している)
を行えば、あとはある程度の流動性が社会にあれば中間層への浮上も
まだまだ可能と言えそうだ。
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