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映画 『サウルの息子』(☆☆☆)

アウシュビッツの中で何が行われていたか、ということを、
他ならぬ収容者側から描いた異色作。
「ゾンダーコマンド」という、収容所内でナチスによって選抜された、
汚れ仕事専門の特殊部隊に所属していたサウル。
ある日、収容所でガス室送りになった息子(と思しき男)の死体と対面する。
敬虔(かどうかは作品の中だけではわからないが)なユダヤ教徒であるサウルは、
ユダヤ教の教義にのっとった正式の埋葬(火葬すると復活できないとされている)を
しようと考え、そのためにラビ(ユダヤ教の聖職者)を捜し出そうと
収容所を走りまわる。
一方、単に汚れ役をやっているだけではないゾンダーコマンド。
内部事情に精通しているだけに、脱走経路を日々探り回り、
念入りに脱走計画を進めていたのである。
サウルは、埋葬の準備をしながら、脱走計画に巻き込まれてしまうのだが…。

収容所の内部状況に迫ったという意味では評価に値するが、
寡黙な主人公サウルが、本当に息子かどうかもわからない死体に執着して、
自分の状況を危ぶませるさまは少々滑稽に映るし
(結末も案の定だったりするのだが)、
途中で見つかるラビも、単に助かりたい一心で
そう言ってるに過ぎないようにも見える。
つまり、サウルはすっかり周りが見えなくなってしまっていて、
とにかく時間が無いから何にでもすがろうという
危うい状況に自らはまりこんで行っているだけになってしまっている。

ワシとしては、実録モノっぽく脱出計画とその実行だけに焦点を当てて、
収容所内の生活にもスポットを当てる感じにしてくれた方が良かったんだが、
今作ではむしろユダヤ教徒としての矜持に焦点を当てているようには思われる。
その意味では、脱出計画の話が少々余計に思えてしまったわけで、
作りとしては中途半端な作品に、ワシとしてはみえた。
題材が面白いだけに、もったいない作品ではある。

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