映画 『殿、利息でござる!』(☆☆☆☆)
興味深い話ではあるが、コレを無批判に「良い話」と言っている風潮には疑問を感じる。
まず問題なのは、江戸後期は今の日本と同じで
「地方は疲弊したおしていた」という現実である。
そもそも、諸藩を「生かさず殺さず」で統治してきた幕府にも問題があるのだが、
藩財政の実情を無視して見栄を張っていたなんて話は、
『武士の家計簿』(原作者同じ)や『超高速参勤交代』でも語られていることである。
それは、物納という納税方式に問題があったわけであるが
(換金する時に相場に収入が左右されてしまうから)、
上から下まで誰もソレに手をつけようとしていないことの方に
実は問題があるわけである
(そういう話も作中でちらっと出てくるが…)。
もっとも、物納は当時の納税者にとっては都合が良かったので、
システムに手をつけることにはメリットもデメリットもあるわけだが…。
それ以上に問題なのは、この国が(現代においても)今後世界と伍していくためには、
実は今作で描かれているような「金融資本主義」的な観点が
どうしても必要になってくるわけである。
ところが、当時から日本人はどういうわけかそういう行き方が嫌いなようで、
今でも蛇蝎のように日本人は嫌うんだよねぇ。
そうでなくても人件費が上がって「モノ作り」が立ち行かなくなってるって言うのに…。
また、「武士」が余っているという話をしている一方で
「人を苦しめる」という理由で駕籠に乗らないというのは、
「駕籠かき」という職業を否定しているわけであり、
また金策のために自分の商店を潰しても構わないという考え方は、
やはり雇用者に対する不義理であり(結果的にはそうならないわけだが)、
「自己満足」のそしりをやはり免れないと思うのである。
今作は『無私の日本人』という短編集の中の一編である。
しかし、上記より「無私」であれば
(絶対に無私であったかと言いきれるかどうかは難しいのだが)、
何をやっても許されるというものではないということである。
そういう意味では「感動させに行ってる」感が鼻につく作品なのではあるが、
内容的には興味深い作品ではある。
彼らは、あくまでも「ギャンブルに勝った」だけのことであるし、
「金融資本主義」にはそういう面が少なからずある、ということである。
一方で、やはり「リスク」を取ることが大事であり、
リスク管理が今後の日本には大事であるという、示唆に富んだ作品と言えるだろう。
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