映画 『機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY』(☆☆☆)
戦争モノの主人公って、えてして「戦争キライ」なヤツが主人公になるんだけど、
そういうヤツに限って効率よく人を殺す能力に優れてたりするわけで
(まぁ、そこを割り切ってしまってるのも、そういう主人公の特徴だったりするんだけど)、
実は平時には役に立たない場合が少なくないんだよね。
今作の主人公の一人イオ・フレミングは、
まさに戦時にしか生きられない「殺人マシーン」的な男であり、一方で大のジャズ好き。
もう一人の主人公ダリル・ローレンツは、
まさに先に挙げた「戦争キライ」なタイプである一方、
第一級のスナイパーで、しかも「リユース・サイコ・デバイス」の実験台。
そもそも傷痍軍人で、まず両脚の膝から下を失い、
さらに今作中で右手を失い、さらに「リユース・サイコ・デバイス」を
最大限生かすべく残った左腕も切断されてしまい、
どんどん戦争の中でしかまともに生きられない体にされていく。
ダリルの同僚にも傷痍軍人が多く
(隊の名前が「リビング・デッド師団」なのだから、集められたというべきだろう)、
彼ら傷痍軍人の悲哀が一つのテーマとなっている。
イオは、FAガンダムを手に入れ「己の力を大きく増幅する道具を手に入れた」と言い、
ダリルは、「リユース・サイコ・デバイス」を完全に適用した
「サイコ・ザク」を手に入れ、「失った手足以上の自由」を手に入れた、と言うのだ。
これらは、まさしく兵器の一面を如実に語るものであり、
そういう意味で彼らは欲望に正直と言えるだろう。
この二人が別次元の戦いをする場面がクライマックスとなっており、
『ガンダム・ジ・オリジン part3』で溜まった欲求不満を
見事に晴らしてくれる作品であることは間違いないが、
この続きは連載中である一方もどかしい展開が続いており、
今作は今作で完成されてる一方、
もともとwebで配信されているものの再編集版であり、
ある意味では配信版への誘導の役割を果たすべき作品なのだろう。
しかし、ワシ的には今作が単体で成立しており、
かつ連載を見てる人間からすると「今作だけでお腹いっぱい」となってしまうのである。
戦争末期の凄惨さをよく描いており、単体としては評価できる作品だが、
続きがあるという前提を置くと「完成され過ぎた作品」と言えなくもない。
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