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映画 『ディバイナー 戦禍に光を求めて』(☆☆☆)

世界的には、第一次世界大戦から100年である
(日本では5年ごとどころか毎年のように「あの戦争から○○年」とやってるが、
各国ではそういう感じにやってるんだろうか)。
今作は、英連邦の一員として協商側として戦ったオーストラリアと、
その際にオーストラリア軍と衝突したトルコの話である。
スタッフロール前のテキストで「第一次世界大戦の戦死者のうち、
半分の死体はいまだ不明となっている」という話が出てくるが、
ガリポリ半島での戦いは激戦だったようで
(地理的にはエーゲ海からイスタンブールに向かう上では重要な場所だからだろう)、
双方に多くの死者が出たようである。
戦後、トルコに進駐したイギリス軍は、遺体回収のため現地の探索を行っていた。
そこに、オーストラリアから従軍した息子を探しにジョシュア(ラッセル・クロウ)が
単身乗り込んでくる。
息子を失い、それがきっかけで結局は妻も失ってしまったジョシュアは、
危険も顧みず、いまだ戦争の爪痕生々しいガリポリ半島に、
軍の許可を得ずにやってきたのである。
イギリス軍は迷惑そうにしていたが、イギリス軍の手伝いをしていた
トルコの軍人は彼に何かを感じたのかそれとなく世話を焼くのだが…。

状況は呉越同舟に近いが、トルコの独立運動と、
ギリシャの侵略にさらされているトルコは、
いまだ戦争の痛みから立ち直っていないようである。
その象徴として宿で働く女性アイシャ(オルガ・キュリレンコ)が登場するのだが、
夫を殺した(とされる)オーストラリア人のジョシュアに、
当初露骨に嫌悪感を覚えるのだが、
息子が早くから彼になついてしまったこともあって、次第に心を開いていく。
でも、互いの国の関係というのも、本質的にはこういうものなのかもしれない。
キチンと理解を深めていくことで、恩讐はある程度超えられると思うのである。
それができていない(あるいは、する気が無い?)日本と中韓朝の関係というのは、
やはり未成熟だと思うし、アジア人の一つの悪い面なのかもしれない。
対話のチャンネルは常に確保しておく必要があると思うし、
そのために手段を選ばないことが、むしろ相手に付け入られないようにする
一つの妙手なのではないだろうか
(そのために日本は、やはり独自外交をできるようにするべきなんだろうが…)。

日本って、侵略らしい侵略をされたことがない国である
(あえて挙げれば元寇で侵略を受けたと言えるが、
それほど明確な意思を持って元軍が上陸したかどうか不分明なんだよね)。
白村江の戦いの後だって、天智天皇は「侵略してくるかも」と
ガクブルで、大津まで都を東遷させたけど、結局何も無し。
連合軍の進駐だって、本格的に植民地化するためだったわけではないんだし、
そういう意味では「国家を取り戻すための戦い」もしたことのない、
少なくとも特定アジアにとっては「侵略者」と言われても仕方のない国なのである
(侵略の不安から逃れるために国土を伸張させたという意味では、
確かに侵略者ではあるが、今も同じような不安から侵略国土を伸張している
人民中国に言われたくないわけだが…)。
一方で、そういう歴史的状況を一顧だにせず責任逃れをしている
日本の一部のお偉いさんの存在は、相互理解の大きな障害と言えるだろう。
ドイツと違って「自らが自らを処断する」歴史を持たない日本では、
結局責任関係をあいまいにして(アメリカの統治戦略のせいと言えなくもないが…)、
彼らに責任逃れできる余地を与えてしまったことが、
今に至る大きなキズになっていると言える。

「呉越同舟」とは、もともと「どんなにいがみ合ってる国同士でも、
両者同時に危機に陥ったならば助け合うこともできる」という意味である。
コレは外交上の手練手管ではない。危機感の共有の問題なのである。
今作のクライマックスなどは、その好例と言えるだろう。
地味だが、なかなか骨のある作品である。

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