映画 『日本で一番悪い奴ら』(☆☆☆☆☆)
警察モノの映画を観た時によく引き合いに出す『ポチの告白』の、
おそらく元ネタの一つにもなっていると思われる、
我が地元北海道警察で実際に起こった「日本警察史上最大の不祥事」を、
その主犯となった一警官の目を通して追った実録映画、
というにはずいぶん面白く脚色されている(だからすごく観やすい)。
柔道の腕を買われて道警入りした諸星(綾野剛)は、
先輩刑事のやり方を学んで内通者を手なずけ、
当時警察が血眼になって行っていた「銃規制」において赫赫たる成果をあげていた。
しかし、それには当然金がかかるし、
1丁挙げたら2丁、2丁挙げたら5丁と、上司からの要求もエスカレートする。
まさにノルマ至上主義のブラック企業そのもの。
しかも手なずけてる内通者は言ってみれば二重スパイ。
ヤクザの手法を熟知してるわけで、シノギ、つまり金がいるなら稼げば良い、
とばかりに覚醒剤取引にまで手を出す。
この辺まで来ると完全にモラルハザードに陥ってるのだが、
それでもノルマ至上主義があるもんだから、
「拳銃を大量摘発するために密輸現場を押さえる。
そのために覚醒剤密輸を一度見逃して信用させる」などという、
完全にアウトな発想が会議を通ってしまうのである
(唯一の反対者も、議場の空気に負けてOKしてしまう辺りなどは、
あの戦争に向かう御前会議を見てるようでさえある)。
でもって、結末は『ポチの告白』と同じという、
諸星は全くもって浮かばれないことになるわけだが、
当初諸星は警察用語の発言をしており、その中のセリフを聞いて
「あぁ、やっぱり警察は『制服を着たヤクザ』だ」という思いを強めたわけである。
そもそも、警察にノルマがあること自体おかしいわけだが
(今でこそ取締主体は変わったが、以前は駐車違反もノルマがあって、
月末になると大量検挙されるという噂があったぐらい)、
ホントは拳銃も麻薬も無きゃ無いに越したことはないわけで、
『ポチの告白』でもノルマ達成のために取り上げた拳銃を
ヤクザに流し直すなどをやってノルマを達成させるという、
完全にノルマありきの主客逆転状態になっている。
軍人や警官は、よく猟犬に例えられる。
「狡兎死して走狗烹らる」(史記)の言葉もあるように、
成績の良すぎる猟犬は、得てして狩場を狩り尽くしてしまい、
結果的に自分の居場所をなくしてしまうものである。
諸星もまたソレであり、使えなくなった猟犬は体良く処分され、
狩人はソレを省みたりしない(まぁ、諸星の人間性にも若干問題はあるが…)。
猟犬をそう仕向けたのは、狩人なのに…。
少なくとも、今から『ロクヨン』前後編一気観するぐらいなら、今作一本で充分。
そのぐらいよく出来てる。
綾野剛が諸星の警官としてのキャリア約20年を演じ切ってる、まさに快作である。
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