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映画 『AMY エイミー』(☆☆☆☆)

人の人生を語る上で、
「禍福は糾える縄の如し」あるいは「人間万事塞翁が馬」という言葉ほど、
便利で陳腐な言葉は無いだろう。
しかし、エイミー・ワインハウスを語る上では、これらの修辞に頼らざるを得ない。
父親が家に寄り付かず、気がつけば外に女を作ってたからこそ、
エイミーは自ら音楽を作る道を歩むことができた。
自ら音楽を作り、それを世に出すことにより、
彼女も思いのよらないほどの速度でスターへの階段を駆け上がってしまった。
そのことは、同時に「音楽にのめり込みたい」と思っていた彼女に、
過剰なまでの「歌う機会」も与えたが、
その中には、小さい頃からの憧れの人も含まれていた。
父からの愛に飢え、若くしてタバコやクサに手を出していた彼女にとって、
自分に似た境遇を持つブレイクとは、相性抜群だったのだろう。
しかし、彼がクサよりも強力なコカインやヘロインを彼女に教えたことが、
彼女の人生を大きく歪める原因になってくる。
そこに、男社会(≒契約社会)を守るべき存在として、
あの忌まわしき父親が再び現れるのである。
エイミーとブレイクは、もはや分かち難い関係になっていた。
確かに、クスリのことを考えれば別れさせなければならなかっただろうが、
愛するブレイクをエイミーから引き離したら、エイミーがどうなるかは、
おそらく容易に想像がついたことだろう。
にもかかわらず父親は、契約を優先して2人揃って断薬するように勧めたのだ。
作中でその断薬に携わった医師が言うように
「エイミーはともかく、ブレイクがそれを望んでいない」のだから、
この断薬がうまく行くはずがないのである
(医師は両者を引き離すべきだと考えていた)。
うまくいかないから、結局街中でトラブって、ブレイクは逮捕。
出所後、ブレイクの方から離婚を申し出ると、いよいよエイミーは壊れてしまう。
クスリを禁じられると彼女は酒に走り、
せっかくの復帰ライブも泥酔状態でまともに歌うこともできず
(それは彼女自身自覚しており、歌いたくないから泥酔した、ということらしいが)、
彼女はキャリアの全てを失ってしまう。
彼女は、自分が一番大事にしていた「歌」まで取り上げられてしまうのだ。
この時点で彼女は「死んだ」と言ってよかったのかもしれない。
その後訪れる生物学上の死には、ほとんど意味はない。

彼女は「有名」なるべきではなかったのか?
そうではないだろう。
有名になるまでのペースがあまりにも早すぎただけなのだろう。
ただ、周りに誰もそれを止められる人間がいなかったことが、
彼女にとって最大の不幸だったのかもしれない。
母親も決して強い方ではなかったようだし、
父親は彼女が幼い頃に父親として何もしてこなかったのに、
彼女が有名になるとまるで「ヒモ」のように彼女の名声を利用していた。
マネージャーも「家族の問題」と突き放していたが、
言い方は悪いがマネージャーには「品質管理」という
大事な仕事があったはずなのだから、
もう少し彼女の私生活に介入すべきだったのではないだろうか
(この辺の考え方が日本と欧米では違うのかもしれないが)。
とはいえ、色恋沙汰にまでマネージャーが介入できるはずもないので
(日本じゃそうでもないみたいだが…)、
ブレイクと出会ったことがエイミーにとって最大の転機になったことは確かだろう。
彼女ほどの才能を、ショウビズの世界が放っておくはずがない。
ただ、やはり上り詰めるのが早すぎたのだろう
(そういう意味では、事務所が徹底的に「品質管理」する
日本のシステムの方が実は彼女に向いているのかもしれないが…)。
ただ「歌う」には才能があり過ぎた。
「趣味を仕事にしても良いことはない」と言われるが、
彼女には「歌う自由」とともに「歌わない自由」も必要だったということだろう。
ただし、それでは「いい商品」とは言えないのだが…。

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