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映画 『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(☆☆☆)

ダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)の身に起きた不幸は、
実は日本の戦後とも関係がある、
とか書き始めるととっても長い話になるので、
すごくざっくり書くと、アメリカもいっときは共産主義
(アメリカでは共産主義政党などは認められてないので
いまだにリベラリズムと呼んでることは、
サンダース候補の登場で再認識させられたわけだが…)に
わりと寛容だった時代があったのに、
人民中国が成立した辺りから雲行きが怪しくなって、
日本でも「逆コース」とか呼ばれる反動が起きて、
アメリカでは今作のように「赤狩り」が行われるわけである。
今作は、単純に言うとトランボが実力で名誉回復するっていう話なわけなんだが、
そういう性質上本来ヤマ場となるべき
「『ローマの休日』でアカデミー賞」とか、「『黒い牡牛』でアカデミー賞」とかといった
目を引くシーンがフツーに挿入されてしまっているのである。
クライマックスは、再び本名で活動を再開する辺りの話なのだが、
そこまで来る間に良いだけピリついてしまったため、
「あっさり押し切られてしまう」感が否めない。

「ストーリーは面白いが、脚本は1つも面白くない」作品と言えなくもないが、
それは日本が良く言えば政治思想に関して緩い、
悪く言えば無関心というか無節操な国だからであり
(その分、他のタブーがあるわけだが)、
そういう意味では今年のアメリカ大統領選挙のゴタゴタは、
ある意味ではアメリカ現代史の縮図と軋轢そのものであると言えるわけである。
また、社会主義、共産主義勢力と正面衝突する国としては、
敵性思想を認めるわけにはいかないということだろう
(そういう風に言えば、日本のお年寄りにも分かりやすいと思うんだが…)。
しかし、国家のプライドのために、
同僚や友人、果ては家族と引き裂かれるのでは、たまったものではない。
ラストで自ら演説する中に、
「(アカ狩りする方もされる方も)互いに傷つけあってただけ」という言葉もあるように、
イデオロギーごときのために人と人が争うというのは、
実にばかばかしい話なのである
(冷戦というのは、そのばかばかしいことのために
世界を二分する状態だったわけだが…)。
サンダース候補が認知され、アメリカでも社会主義が再び脚光を浴びている現状を、
泉下のダルトン・トランボはいかに見ているのだろうか…。

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